本店移転登記の手続きガイド|必要書類と費用を解説

更新: 2026年8月24日17分で読める

会社の本店所在地を変更したときは、移転の日から2週間以内に本店移転の登記を申請します12。本記事は、その手続きの全体像と、自分のケースではどこを読めばよいかを整理した案内です。

本記事は株式会社の一般的なケースを前提に説明します。 登記事項は会社の種類によって異なるため2、合同会社については合同会社の本店・住所変更をご覧ください。

本店移転登記とは

本店移転登記とは、登記簿に記録されている本店の所在場所を変更する登記です。本店の所在場所は登記事項とされており3、変更が生じたときは2週間以内に本店の所在地において変更の登記をしなければならないと定められています1(本店の移転については、同一の登記所の管轄区域内で移転する場合がこれによります)。

登記簿に記録された所在場所を実際に移した場合は、上記の期限内に登記を申請することになります。他の登記所の管轄区域内へ移転したときは、2週間以内に、旧所在地においては移転の登記をし、新所在地においては会社法911条3項各号の事項を登記します2

本店移転が必要になるケース

  • オフィスの移転
  • 自宅から事務所への移転
  • レンタルオフィスへの移転
  • 他の都道府県への移転

なお、登記簿上の本店を動かさずに営業所だけを移す場合、本店移転の登記そのものは発生しません。ただし、その営業所が会社法上の支店に当たるときは、支店の所在場所も登記事項なので3、その支店についての登記が別に必要です(移転の日から2週間以内1。登録免許税は本店と同じく1か所につき3万円です4)。この違いは取引先への移転通知の書き方で整理しています。

手続きが決まる3つの分かれ道

本店移転の手続きは、次の3点でほぼ決まります。順に確認すると、必要な決議・書類・費用が絞り込めます。

#確認すること何が変わるか
1新しい本店が同じ登記所の管轄区域内か申請先・申請書の通数・登録免許税
2定款に本店の所在地をどこまで書いているか株主総会の決議が必要かどうか
3取締役会を設置しているか移転先・移転日を決める機関

1. 管轄内移転と管轄外移転

移転前と移転後の本店所在地が同じ登記所の管轄区域内にあるのが管轄内移転です。

: 東京都渋谷区から東京都目黒区への移転(どちらも東京法務局渋谷出張所の管轄)5

異なる登記所の管轄区域に移るのが管轄外移転です。

: 東京都渋谷区から神奈川県横浜市への移転

管轄外移転では、新所在地における登記の申請を旧所在地を管轄する登記所を経由して行い、旧所在地における登記の申請と同時にしなければならないと定められています6。申請書は旧所在地宛て・新所在地宛ての2通になりますが、提出先は旧所在地の登記所1か所です。

それぞれの実務は管轄内移転の手続き管轄外移転の手続きで詳しく扱っています。自分の移転先の管轄は、法務局の管轄案内で確認できます7

2. 定款に本店をどこまで書いているか

定款には本店の所在地を記載しなければなりません8。ここに最小行政区画までしか書いていない場合、その区画内での移転であれば株主総会の決議は不要です9。区画を越えるときは、本店の所在地が定款の記載事項である以上8定款変更が必要になり、定款変更は株主総会の決議によります10。この決議は特別決議です11

法務局の記載例も、定款に最小行政区画までを規定している場合にその区画内で移転するときは株主総会の決議は必要なく、株主総会議事録および株主リストの添付を要しないとしています9

ポイント: 定款に「当会社は、本店を東京都○○市に置く。」とだけ記載している場合、○○市内での移転なら株主総会は不要です。

自社がどちらに当たるかの判定は定款変更が必要なケース・不要なケースで扱っています。

3. 移転先・移転日を決める機関

定款変更が不要な場合、移転先と移転日は原則として取締役会の決議で決めます。取締役会設置会社でない会社では、取締役の過半数の一致によります9。取締役会の決議の要件は会社法369条1項が定めており、定款で加重することもできます12

決議要件や議事録・決定書の書き分けは本店移転の議事録・決定書が4パターンに分けて担当しています。

3つを組み合わせるとこうなる

上の3点が決まると、必要な決議・書類・費用は次のように定まります(株式会社の一般的な例です)。

定款の書き方と移転先管轄決める機関主な添付書類登録免許税
最小行政区画まで記載・その区画内へ移転管轄内取締役会(非設置会社は取締役の過半数)取締役会議事録等3万円
最小行政区画まで記載・区画を越えて移転管轄内株主総会(特別決議)+取締役会等株主総会議事録・株主リスト・取締役会議事録等3万円
最小行政区画まで記載・区画を越えて移転管轄外株主総会(特別決議)+取締役会等同上(新所在地宛ては、代理申請の場合の委任状のみ)6万円
定款に番地まで記載している管轄内株主総会(特別決議)+取締役会等株主総会議事録・株主リスト・取締役会議事録等3万円
定款に番地まで記載している管轄外株主総会(特別決議)+取締役会等同上(新所在地宛ては、代理申請の場合の委任状のみ)6万円

この表は、定款に最小行政区画まで、または番地まで定めている場合を並べたものです。定款の定め方によっては、管轄外への移転でも定款変更が不要になることがあります。その場合の決議機関と添付書類は1行目と同じで、登録免許税だけが6万円になります(法務局の記載例も、管轄外の申請書に添付する株主総会議事録を「定款変更をする場合に必要です」としています)13

定款に番地まで書いている場合、同じ市区町村内の移転でも定款変更が必要になります。株主総会の招集が要るかどうかがここで分かれるため、移転の日程を決める前に定款を確認しておくと、手戻りを減らしやすくなります。

必要書類

本店移転登記に必要な主な書類は以下のとおりです。

書類名管轄内移転管轄外・旧所在地宛て管轄外・新所在地宛て
本店移転登記申請書1通1通1通
株主総会議事録(定款変更をする場合に必要)913
株主リスト(登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合)14
取締役会議事録(または取締役の過半数の一致を証する書面)913
委任状(代理人に登記申請を委任した場合のみ)1315

管轄外移転では、申請書は旧所在地宛て・新所在地宛ての2通になりますが、この2通を同時に、変更前の本店所在地の登記所へ提出します13。新所在地宛ての申請書には、代理権限を証する書面を除き、他の書面の添付を要しません16

注意: 管轄外移転の場合、印鑑カードは引き継がれません。印鑑証明書が必要な場合は、登記完了後に新所在地を管轄する登記所へ印鑑カードを請求します。2025年4月21日施行の商業登記規則改正により、旧所在地の登記所が印鑑記録(廃止等の記録がされていないものに限ります)を新所在地の登記所へ移送することになったため、本店移転の登記申請と同時に新所在地を管轄する登記所へ印鑑届書を提出する必要はなくなりました。ただし改印を希望する場合は、本店移転の登記申請の前または同時に旧所在地を管轄する登記所へ、あるいは登記完了後に新所在地を管轄する登記所へ、改印届書を提出します17

書類ごとのチェックリストは本店移転登記の必要書類、申請書の書き方と様式のダウンロードは本店移転登記申請書の書き方にまとめています。

登録免許税(費用)

本店または支店の移転の登記の登録免許税は、1か所につき3万円です418

管轄内移転の場合

  • 登録免許税: 3万円19

管轄外移転の場合

  • 登録免許税: 6万円(旧所在地宛て3万円 + 新所在地宛て3万円)1320

司法書士報酬などを含めた費用全体の内訳は本店移転登記の費用、自分で申請するか依頼するかの判断は本人申請と司法書士依頼の判断基準で扱っています。

手続きの流れ

  1. 移転先と移転日を決める

    • 定款変更が不要な場合は、原則として取締役会(取締役会設置会社でない会社は取締役の過半数の一致)で移転先・移転日を決めます9
    • 定款変更が必要な場合は、株主総会の特別決議で定款を変更したうえで、具体的な所在場所と移転日を取締役会(取締役会設置会社でない会社は取締役の過半数の一致)で決めます。この場合、株主総会議事録と、取締役会議事録(取締役会設置会社でない会社は取締役の過半数の一致を証する書面)の両方が添付書類になります913
  2. 必要書類を作成する

    • 議事録、株主リスト、申請書などを準備します
  3. 移転の日から2週間以内に申請する

    • 期限は移転の日から2週間です。管轄内移転は会社法915条1項1、管轄外移転は会社法916条2が根拠です
    • 管轄外では旧所在地において移転の登記、新所在地において会社法911条3項各号の事項の登記をすることになります2。申請は旧所在地宛て・新所在地宛ての2件となり6、登録免許税は1件につき3万円なので合計6万円です20。2通は旧所在地の登記所へ同時に提出します6
  4. 登記の完了を待つ

    • 法務局は、登記手続が完了する日の目安として「登記完了予定日」を示しており、申請を行った登記所を管轄する法務局のホームページから確認できます21
    • ただし法務局は、補正がある場合や管轄の法務局を変更する本店移転の場合などはこの目安から除くと明記しています21。管轄外移転を予定している場合は、登記完了予定日どおりに完了するとは限らないものとして日程を組むほうが安全です。管轄外移転の進み方は管轄外移転の手続きが担当しています

オンラインでの申請可否や申請方法の選び方は本店移転登記のオンライン申請登記申請の方法3種の比較を参照してください。登記が完了したあとの手続きは本店移転登記の完了後にやることにまとめています。

目的から記事を選ぶ

知りたいこと参照する記事
管轄内での移転の進め方管轄内移転の手続き
管轄外での移転の進め方管轄外移転の手続き
用意する書類の一覧本店移転登記の必要書類
申請書の書き方・様式のダウンロード本店移転登記申請書の書き方
議事録・決定書のひな形本店移転の議事録・決定書
定款変更が必要かどうか定款変更が必要なケース・不要なケース
費用の内訳本店移転登記の費用
オンラインで申請できるか本店移転登記のオンライン申請
登記が終わったあとにやること本店移転登記の完了後にやること
許認可の変更届出本店移転にともなう許認可の変更届出
取引先への移転通知の文面移転通知の書き方
賃貸オフィスから移転する場合の注意点賃貸オフィス移転の登記
バーチャルオフィスへ移転する場合バーチャルオフィス移転の登記
合同会社の場合合同会社の本店・住所変更

書類作成はオンラインでご自身でも

本店移転登記の書類は、決議の内容と申請書の記載(移転日・新しい所在場所の表記)がそろっている必要があります。

wiz法人登記は、フォームに入力した内容をそのまま反映して、本店移転登記の株主総会議事録・取締役決定書・株主リスト・登記申請書をご自身で作成できるオンラインソフトウェアです(4,500円・税別)。個別の法的判断や申請の代理は行わず、作成した書類はご自身で確認のうえ法務局に申請いただきます。

取締役会または監査役を設置している会社には、現在対応していません。

このほか登録免許税などの実費が別途かかります。


参照法令・出典(確認日: 2026-08-24)

免責

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。個別のケースについては、司法書士または管轄の法務局にご相談ください。記載内容は確認日(2026-08-24)時点の法令・公表情報に基づきます。

Footnotes

  1. 会社法915条1項(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 2 3 4

  2. 会社法916条(柱書・1号)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 2 3 4 5

  3. 会社法911条3項3号(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 2

  4. 登録免許税法 別表第一24号(一)ヲ(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035 2

  5. 東京法務局 管轄区域一覧 https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/table/shikyokutou/all.html

  6. 商業登記法51条1項・2項(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125 2 3

  7. 法務局 管轄のご案内 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html

  8. 会社法27条3号(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 2

  9. 法務局 株式会社本店移転登記申請書(管轄登記所内で移転する場合)記載例(様式1-13) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001364566.pdf 2 3 4 5 6 7

  10. 会社法466条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

  11. 会社法309条2項11号(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

  12. 会社法369条1項(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

  13. 法務局 株式会社本店移転登記申請書(管轄登記所外に移転する場合)記載例(様式1-14) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252661.pdf 2 3 4 5 6 7

  14. 商業登記規則61条3項(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023

  15. 法務局 記載例(様式1-13)「(注)代理人に登記申請を委任した場合にのみ、必要です。」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001364566.pdf

  16. 商業登記法51条3項・18条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125

  17. 法務省 本店を管轄登記所外に移転する際の印鑑届書の提出が不要になりました https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00228.html

  18. 国税庁 タックスアンサーNo.7191 登録免許税の税額表 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm

  19. 法務局 記載例(様式1-13)「登録免許税 金3万円」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001364566.pdf

  20. 法務局 記載例(様式1-14)「1件につき3万円です」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252661.pdf 2

  21. 法務局 商業・法人登記の申請書様式 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html 2

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。 個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。 記事内の法令・税額等は、記事末尾に記載の確認日時点の情報です。

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