結論から。法務局の管轄をまたぐ本店移転(管外移転)の登記は、自分でできます。 まず全体像を早見表でつかんでください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 登録免許税 | 合計6万円(旧所在地分3万円+新所在地分3万円)12 |
| 申請期限 | 移転の日から2週間以内(会社法915条1項)3 |
| 申請書 | 2通(旧所在地宛て・新所在地宛て)を作成 |
| 提出先 | 2通とも旧所在地を管轄する法務局へ同時に提出4 |
| 主な添付書面 | 株主総会議事録・株主リスト・取締役会議事録(または取締役決定書)など5 |
| 印鑑届書 | 2025年4月21日から提出不要(後述)6 |
| 自分でできる? | できます(書式・記載例は法務局が公開7) |
当サービス「wiz法人登記」への申込も80%が本店移転で、うち33%が管轄をまたぐ移転です(2025年12月〜2026年2月の当社実データ)。管外移転は決して特殊な手続きではありません。
管内移転と管外移転の違い
本店移転の登記は、移転先が同じ法務局の管轄内かどうかで手続きが変わります。
| 管内移転 | 管外移転 | |
|---|---|---|
| 申請書 | 1通 | 2通 |
| 登録免許税 | 3万円 | 6万円(3万円×2)12 |
| 提出先 | 管轄法務局 | 2通とも旧所在地の法務局4 |
| 印鑑届書 | 不要 | 不要(2025年4月21日〜)6 |
| 印鑑カード | そのまま使える | 引き継がれない(再交付が必要)6 |
なお、本店の所在場所は登記事項です(会社法911条3項3号)8。移転したら登記は必須で、怠ると100万円以下の過料(かりょう。刑罰ではない金銭的な制裁)の対象になり得ます(会社法976条1号)9。
経由申請の仕組み|2通とも旧所在地の法務局へ
管外移転で最も間違えやすいのが提出先です。新所在地宛ての申請は、旧所在地の法務局を経由して行うと法律で決まっています(商業登記法51条1項)4。旧所在地宛て・新所在地宛ての2つの申請は同時にしなければなりません(同条2項)4。
つまり「新しい法務局に1通、古い法務局に1通」ではなく、2通セットで旧所在地の法務局に出すのが正解です。
ポイントは3つあります。
- 新所在地宛ての申請書には、委任状(代理人に頼む場合)を除き添付書面は不要です(商業登記法51条3項)4
- どちらか一方に不備(却下事由)があると、両方まとめて却下されます(商業登記法52条)10。2通の整合性が重要です
- 旧法務局が書類を新法務局へ送付し、新法務局側の登記が先に完了する流れです(商業登記法52条2項〜4項)10
決議は誰がする?|定款変更の要否×取締役会の有無で4分岐
「本店の所在地」は定款(会社の基本ルール)の必須記載事項です(会社法27条3号)11。そこで、まず移転先が定款に書かれた所在地の範囲内かどうかを確認します。
ステップ1: 定款変更が必要か
- 定款の記載が「当会社は、本店を東京都新宿区に置く」で、大阪市へ移転する → 範囲外なので定款変更が必要
- 定款の記載範囲内(例:「東京都に置く」で都内の他区へ) → 定款変更は不要
定款変更には株主総会の決議が必要で(会社法466条)12、これは特別決議(議決権の過半数を持つ株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成)にあたります(会社法309条2項11号)13。
ステップ2: 具体的な移転先と時期を決める
具体的な所在場所と移転日は、業務執行の決定として、取締役会設置会社なら取締役会の決議(会社法362条2項1号)、取締役会を置かない会社なら取締役の過半数の一致で決めます(会社法348条2項)14。
まとめると次の4パターンです。
| 取締役会あり | 取締役会なし | |
|---|---|---|
| 定款変更が必要 | 株主総会特別決議+取締役会議事録 | 株主総会特別決議+取締役決定書 |
| 定款変更が不要 | 取締役会議事録のみ | 取締役決定書のみ |
必要書類と書き方
法務局の記載例5によると、定款変更を伴う典型的なケースの書類は次のとおりです。
旧所在地宛ての申請書に添付するもの
- 株主総会議事録 1通
- 株主リスト(株主の氏名・住所・議決権数等を証する書面) 1通
- 取締役会議事録(取締役会を置かない会社は「取締役の過半数の一致を証する書面」=取締役決定書) 1通
- 委任状 1通(代理人が申請する場合のみ)
新所在地宛ての申請書に添付するもの
- 委任状のみ(代理人が申請する場合)。それ以外の添付書面は不要です4
申請書の様式(Word)と記入済みの記載例(PDF)は、法務局の「商業・法人登記の申請書様式」ページから無料で入手できます7。登記の原因日付を将来の日付にしない、申請書・委任状には法務局へ届け出た会社実印を押す、といった注意点も同ページにまとまっています7。
登録免許税6万円の内訳
本店移転登記の登録免許税は「本店の数1箇所につき3万円」です(登録免許税法 別表第一24号(一)ヲ)1。国税庁の税額表でも「本店または支店の移転の登記 1箇所につき3万円」と確認できます2。
管外移転では旧所在地宛て・新所在地宛ての2件の申請それぞれに3万円がかかるため、合計6万円です。法務局の記載例でも、①旧所在地宛て・②新所在地宛ての申請書にそれぞれ「登録免許税 金3万円」と記載されています5。納付は収入印紙の貼付が基本です7。
【2025年4月改正】印鑑届書の提出が不要になりました
2025年(令和7年)4月21日から、商業登記規則の改正(令和7年法務省令第10号)により、管外移転をしても新しい法務局への印鑑届書の提出が不要になりました6。旧法務局が印鑑記録を新法務局へ職権で移送し、印鑑を提出したものとみなされる仕組みです6。
ただし注意点が1つ。印鑑カードは従来どおり引き継がれません6。印鑑証明書が必要な場合は、登記完了後に新所在地を管轄する法務局へ印鑑カードの交付を請求してください。改印したい場合は、旧法務局へ申請前または同時に、あるいは登記完了後に新法務局へ改印届書を提出します6。
改正前の古い情報では「管外移転には印鑑届書が必要」と書かれていることがあります。2025年4月21日以降は不要です。
申請から完了までの流れ
- 定款を確認し、必要な決議を行う(株主総会・取締役会など)
- 申請書2通と添付書面を準備する
- 移転の日から2週間以内に、2通とも旧所在地の法務局へ提出する34
- 旧法務局での審査を経て書類が新法務局へ送付され、新法務局・旧法務局の順に登記が完了する10
注意したいのは期間です。法務局は通常「登記完了予定日」の目安を公表していますが、管轄の法務局を変更する本店移転はこの目安の対象外とされています7。2つの法務局で処理されるぶん、時間に余裕を持ってください。また、登記手続きが完了するまでの間は、登記事項証明書・印鑑証明書が発行されません7。銀行や取引先への提出予定がある場合は、申請前に必要な通数を取得しておくと安心です。
よくある質問
Q. 2週間の期限を過ぎてしまったら? A. 期限後でも登記申請はできます。ただし登記を怠ると100万円以下の過料の対象になり得ます(会社法976条1号)9。過料の判断は裁判所が行うもので、個別の事情については法務局や司法書士にご相談ください。
Q. 印鑑届書は本当に不要? A. 2025年4月21日以降の申請では不要です(令和7年法務省令第10号)6。印鑑カードの再交付だけ忘れずに。
Q. 申請書はどこに出す? A. 旧所在地宛て・新所在地宛ての2通とも、旧所在地を管轄する法務局へ同時に提出します(商業登記法51条)4。
Q. 手続き中に登記事項証明書は取れる? A. 登記完了までは発行されません7。必要な証明書は申請前の取得をおすすめします。
書類作成はwiz法人登記なら4,500円
管外移転は「申請書2通・添付書面・2通の整合性」と、自分でやる場合の書類負担が管内移転より大きい手続きです。
wiz法人登記なら、フォームに入力するだけで管外移転に必要な登記書類一式を**4,500円(税別)**で自動生成できます。管外移転の書類作成サービスとしては最安です(当社調べ・確認日2026-07-15)。実際に、当サービス利用者の62%は申込を即日で完了しています(当社実データ)。主な法定実費は登録免許税の6万円です(このほか印鑑カードの再交付や証明書の取得等で実費が生じる場合があります)。書類作成の手間と専門家への依頼コストを、まとめて抑えられます。
参照法令・出典(確認日: 2026-07-15)
免責
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。個別のケースについては、司法書士または管轄の法務局にご相談ください。記載内容は確認日(2026-07-15)時点の法令・公表情報に基づきます。
Footnotes
-
登録免許税法 別表第一24号(一)ヲ(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035 ↩ ↩2 ↩3
-
国税庁 タックスアンサーNo.7191 登録免許税の税額表 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm ↩ ↩2 ↩3
-
会社法915条1項(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩ ↩2
-
商業登記法51条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
-
法務局 株式会社本店移転登記申請書(管轄登記所外に移転する場合)記載例 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252661.pdf ↩ ↩2 ↩3
-
法務省 本店を管轄登記所外に移転する際の印鑑届書の提出が不要になりました https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00228.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
-
法務局 商業・法人登記の申請書様式 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
会社法911条3項3号(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩
-
会社法976条1号(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩ ↩2
-
商業登記法52条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125 ↩ ↩2 ↩3
-
会社法27条3号(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩
-
会社法466条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩
-
会社法309条2項11号(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩
-
会社法362条2項1号・348条2項(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。 個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。 記事内の法令・税額等は、記事末尾に記載の確認日時点の情報です。