商業登記の改正まとめ【2025-2026年】|本店移転の印鑑届書が不要に・休日設立・手数料改定

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商業登記のルールは、2024年10月から2026年5月にかけて相次いで変わりました。主な変更は次の5つです。

  1. 代表取締役等住所非表示措置の新設(2024年10月1日施行)1
  2. 証明書手数料の改定と電子証明書「1か月」の新設(2025年4月1日施行)23
  3. 管轄外の本店移転で印鑑届書が不要に(2025年4月21日施行)4
  4. 休日を会社の設立日にできる特例(2026年2月2日施行)5
  5. 企業価値担保権の登記制度の開始(2026年5月25日施行)6

一方で、登録免許税の税額は変わっていません78。また「商号にローマ字が使えるようになった」という話は最近の改正ではなく、2002年(平成14年)から可能です9。この記事では、各変更の「誰に・何が変わったか」を公布番号・施行日つきで整理します。

改正タイムライン早見表

施行日変更内容根拠となる省令等主に関係する人
2024年10月1日代表取締役等住所非表示措置の新設令和6年法務省令第28号10住所を公開したくない株式会社の代表者
2025年4月1日証明書手数料の改定・電子証明書1か月の新設令和7年デジタル庁・法務省令第1号ほか11証明書・電子証明書を取得する全法人
2025年4月21日管轄外本店移転の印鑑届書が不要に令和7年法務省令第10号12別管轄へ本店移転する会社
2026年2月2日休日を設立の日にできる特例令和8年法務省令第2号13これから会社を設立する人
2026年5月25日企業価値担保権の登記制度事業性融資推進法・令和8年法務省令第25号614新制度の融資を利用する会社

2024年10月1日:代表取締役等住所非表示措置

誰に: 株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人。 何が変わった: 申出により、登記事項証明書などに代表者住所のうち行政区画(市区町村など)以外の部分を表示しないようにできる制度が始まりました(商業登記規則31条の3)15。商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号、2024年4月16日公布)により創設され、令和6年10月1日から施行されています110

注意点は2つあります。申出は、設立や代表者の就任・住所変更など住所が登記されることとなる登記の申請と同時にする場合に限りできます(措置だけを単独で申し出ることはできません)1。また、措置が講じられると登記事項証明書で代表者住所を証明できなくなるため、金融機関からの融資や不動産取引で必要書類が増えるなどの影響があり得ると法務省も注意喚起しています1

2025年4月1日:証明書手数料の改定と電子証明書「1か月」新設

誰に: 登記事項証明書・印鑑証明書・商業登記電子証明書を取得するすべての会社。 何が変わった: 法務省が公表する登記手数料は、令和7年4月1日以降、次の額になっています2

証明書請求方法手数料
登記事項証明書書面請求600円2
登記事項証明書オンライン請求・郵送受取520円2
登記事項証明書オンライン請求・窓口受取490円2
印鑑証明書書面請求500円2

商業登記電子証明書(会社代表者の電子証明書)は、2025年4月1日から手数料が引き下げられ、あわせて証明期間「1か月」(500円)が新設されました。3か月の場合は1,300円から1,100円になっています3。現在の商業登記規則33条の2では、証明期間は「1か月」または「3か月の整数倍(2年3か月以内)」から選べると定められています1115。電子証明書関係の規則改正は、令和7年デジタル庁・法務省令第1号(2025年3月26日公布・同年4月1日施行)によるものです11

2025年4月21日:管轄外の本店移転で印鑑届書が不要に

誰に: 本店を別の法務局の管轄区域へ移転する会社。 何が変わった: 商業登記規則の一部を改正する省令(令和7年法務省令第10号、2025年3月24日公布)が令和7年4月21日に施行され、管轄外への本店移転の登記申請がされた場合、旧所在地の登記所が印鑑記録を新所在地の登記所へ職権で移送するようになりました。これにより、移転先の登記所への印鑑届書の再提出が不要になっています412

ただし、印鑑カードは従来どおり引き継がれません。印鑑証明書が必要な場合は、登記完了後に新所在地の登記所へ改めて印鑑カードの交付を請求する必要があります4。管轄外の本店移転の手続き全体(申請書2通・同時申請の仕組みなど)は、管轄外への本店移転登記ガイドで詳しく解説しています。

2026年2月2日:休日を会社の設立日にできる特例

誰に: これから株式会社などを設立する人。 何が変わった: 商業登記規則等の一部を改正する省令(令和8年法務省令第2号、2026年1月16日公布)が令和8年2月2日に施行され、設立登記の申請で、申請日の翌日が行政機関の休日(土日祝日など)にあたる場合に、その休日を「登記の日」=会社成立日とするよう求めることができるようになりました(商業登記規則35条の4の新設)51315

これまで会社の成立日は法務局が開いている平日に限られていましたが、この特例により、たとえば土日や祝日の記念日を設立日にすることが可能になりました。利用するには、特例を求める旨と指定する登記の日(指定登記日)を申請書に記載し、指定登記日が行政機関の休日であることが必要です。連休のように休日が続く場合は、そのうち任意の1日を指定できます(申請は指定登記日の直前の開庁日に受付される必要があります)5。なお、添付書面は従前どおり申請の日までに作成したものを用意する必要がある点に注意してください5

2026年5月25日:企業価値担保権の登記制度

誰に: 不動産などの個別資産ではなく、事業全体を担保に融資を受けたい会社。 何が変わった: 事業性融資の推進等に関する法律(令和6年法律第52号)が2026年5月25日に施行され、**会社の総財産を一体として担保にできる「企業価値担保権」**という新しい担保制度が始まりました6。これに伴い企業価値担保登記規則(令和8年法務省令第25号、2026年4月3日公布)が定められ、商業登記規則も同日(2026年5月25日)付けで整備されています14

新制度の融資を利用しない会社には、直ちに影響はありません。「こういう選択肢が増えた」と押さえておけば十分です。

変わっていないもの:登録免許税とローマ字商号

改正情報とあわせて誤解されやすいのが、この2つです。

登録免許税の税額は変わっていません。2026年7月15日時点の現行法令で、本店移転の登記は1箇所につき3万円(登録免許税法 別表第一24号(一)ヲ)、役員変更の登記は1件につき3万円(資本金1億円以下の会社は1万円)(同カ)、目的変更・商号変更などの登記事項の変更は1件につき3万円(同ツ)のままです78。2025年4月に改定されたのは証明書などの「手数料」であり、登記申請にかかる「登録免許税」ではありません。

商号のローマ字使用も、最近の改正ではありません。平成14年の商業登記規則等の改正(施行日:平成14年11月1日)により、すでにローマ字(大文字・小文字)、アラビヤ数字と「&」「’」「,」「‐」「.」「・」の6種類の符号が使えるようになっています9。符号は字句を区切る場合に限って使え、商号の先頭・末尾には使えません(ピリオドのみ、省略を表すものとして末尾で使えます)9

実務への影響チェックリスト

  • 管轄外への本店移転を予定している → 印鑑届書の準備は不要です。ただし印鑑カードは引き継がれないため、登記完了後に新管轄で交付請求を4
  • 登記事項証明書をよく取得する → オンライン請求(郵送520円・窓口受取490円)が書面請求(600円)より安くなっています2
  • 代表者の自宅住所を公開したくない → 住所非表示措置を検討。ただし融資・取引への影響を確認してから1
  • 設立日にこだわりたい → 土日祝日も設立日に指定可能に。希望日の直前の開庁日に申請が受付される必要があります(例: 日曜を指定するなら金曜に申請)515
  • ネットの古い解説記事を参考にしている → 記事の作成日と上記の施行日を見比べて、改正前の情報でないか確認を

なお、本店移転にともなう法務局以外の手続き(税務署・年金事務所など)は、会社の住所変更手続き一覧にまとめています。

よくある質問

Q. 印鑑届書が廃止されたと聞きました。もう印鑑の届出は一切不要ですか?

A. いいえ。2025年4月21日の改正で不要になったのは、管轄外へ本店移転する際の移転先登記所への印鑑届書の再提出です4。オンライン申請では印鑑届出自体が任意とされる場面もありますが、届け出た印鑑(会社実印)の制度自体がなくなったわけではありません。

Q. 登録免許税も安くなったのですか?

A. なっていません。2025年4月1日に改定されたのは登記事項証明書などの手数料2、登記申請時に納める登録免許税の税額(本店移転は1箇所につき3万円=管轄外は計6万円、役員変更3万円など)は現行法令のとおり変わっていません78

Q. 休日設立の特例で、土日に法務局へ申請できるようになったのですか?

A. いいえ。この特例は「申請日の翌日が行政機関の休日である場合に、その休日を登記の日にするよう求められる」制度です(商業登記規則35条の4)15。休日に申請の受付が行われるようになったわけではありません。

Q. 会社名に英語(ローマ字)が使えるようになったのは最近ですか?

A. いいえ。平成14年11月1日施行の改正からずっと可能です9。「最近解禁された」という情報は誤りです。

変更登記の書類作成はオンラインで

改正で手続きがシンプルになった今こそ、本店移転や役員変更などの変更登記は自分で申請しやすくなっています。wiz法人登記は、フォームに入力した内容をそのまま反映して、本店移転や役員変更などの変更登記の申請書をご自身で作成できるオンラインソフトウェアです(4,500円・税別)。個別の法的判断や申請の代理は行わず、作成した書類はご自身で確認のうえ法務局に申請いただきます。なお、登録免許税などの実費は別途必要です。

参照法令・出典(確認日: 2026-07-15)


免責: 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。個別のケースについては、司法書士等の専門家または管轄の法務局にご確認ください。記載内容は確認日時点の法令・公表情報に基づきます。

Footnotes

  1. 法務省「代表取締役等住所非表示措置について」(令和6年法務省令第28号・令和6年10月1日施行) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html 2 3 4 5

  2. 法務省「登記手数料について」(令和7年4月1日〜の手数料一覧) https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/ 2 3 4 5 6 7 8

  3. 法務省民事局「商業登記電子証明書の手数料引下げ」(令和7年4月1日から。証明期間1か月を新設) https://www.moj.go.jp/content/001435585.pdf 2

  4. 法務省「本店を管轄登記所外に移転する際の印鑑届書の提出が不要になりました」(令和7年法務省令第10号・令和7年4月21日施行) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00228.html 2 3 4 5

  5. 法務省「休日を会社等の設立の日とすることが可能になりました」(令和8年法務省令第2号・令和8年2月2日施行) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00234.html 2 3 4 5

  6. e-Gov法令検索 事業性融資の推進等に関する法律(令和6年法律第52号・2026年5月25日施行) https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000052 2 3

  7. 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」(会社の商業登記等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm 2 3

  8. e-Gov法令検索 登録免許税法(昭和42年法律第35号)別表第一24号(一) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035 2 3

  9. 法務省「商号にローマ字等を用いることについて」(平成14年11月1日施行) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji44.html 2 3 4

  10. e-Gov法令検索 商業登記規則 改正沿革(令和6年法務省令第28号: 2024年4月16日公布・2024年10月1日施行) https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023 2

  11. e-Gov法令検索 商業登記規則 改正沿革(令和7年デジタル庁・法務省令第1号: 2025年3月26日公布・2025年4月1日施行) https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023 2 3

  12. e-Gov法令検索 商業登記規則 改正沿革(令和7年法務省令第10号: 2025年3月24日公布・2025年4月21日施行) https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023 2

  13. 法務省民事局長通達 令和8年1月21日付け法務省民商第9号(令和8年法務省令第2号の公布・施行) https://www.moj.go.jp/content/001455057.pdf 2

  14. e-Gov法令検索 商業登記規則 改正沿革(企業価値担保登記規則〔令和8年法務省令第25号〕: 2026年4月3日公布・2026年5月25日施行) https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023 2

  15. e-Gov法令検索 商業登記規則(昭和39年法務省令第23号)現行条文(31条の3・33条の2・35条の4) https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023 2 3 4 5

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。 個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。 記事内の法令・税額等は、記事末尾に記載の確認日時点の情報です。

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