会社の住所が変わったら、まず法務局で「本店移転登記」(会社の住所変更の登記)を移転の日から2週間以内に申請します1。あわせて、税務署・都道府県税事務所・年金事務所・労働基準監督署・ハローワークなどへの届出も必要です。
この記事では、届出先ごとの期限と書類を一覧にまとめ、時系列のチェックリストで「何をいつまでに」を整理します。
住所変更で必要な手続きの早見表
| 届出先 | 手続き(書類) | 期限 | 根拠・案内 |
|---|---|---|---|
| 法務局 | 本店移転登記 | 移転日から2週間以内 | 会社法915条1項1 |
| 税務署 | 異動事項に関する届出(異動届出書) | 異動後速やかに | 国税庁2 |
| 税務署 | 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 移転から1か月以内 | 所得税法230条3・国税庁4 |
| 都道府県税事務所・市区町村 | 異動の届出(名称は自治体で異なる) | 自治体により異なる | 各自治体サイト |
| 年金事務所(日本年金機構) | 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 | 変更から5日以内 | 厚生年金保険法施行規則23条5・日本年金機構6 |
| 労働基準監督署または公共職業安定所 | 労働保険 名称、所在地等変更届 | 変更の翌日から10日以内 | 労働保険徴収法施行規則5条7 |
| ハローワーク | 雇用保険事業主事業所各種変更届 | 変更の翌日から10日以内 | 雇用保険法施行規則142条8 |
なお、検索では「会社の住所変更」と呼ばれることが多いですが、登記の世界では「本店移転」という用語を使います。この記事では同じ意味で使います。
全体マップ:起点は法務局の登記
手続きの起点は法務局の本店移転登記です。年金事務所などへの届出では、変更後の内容を証明する書類として登記事項証明書(会社の登記内容を証明する書面)の写しの添付を求められる場合があるためです6。登記を先に済ませると、その後の届出がスムーズになります。
登記手続き全体の流れ(決議から申請・完了まで)は、本店移転登記の総合ガイドで詳しく解説しています。
1. 法務局:本店移転登記(移転日から2週間以内)
会社の本店(登記上の住所)を移転したときは、移転の日から2週間以内に、本店所在地で変更の登記を申請しなければなりません(会社法915条1項)1。登記を怠ったときは、100万円以下の過料(かりょう。刑罰ではない金銭的な制裁)の対象になり得ます(会社法976条1号)9。期限を意識して早めに動くのが安全です。
- 費用(登録免許税): 本店移転の登記は本店1箇所につき3万円です10。費用の内訳や節約のポイントは本店移転登記の費用をご覧ください。
- 社内の決議: 定款(会社の基本ルール)で本店所在地を最小行政区画(市区町村など)まで定めている場合、同じ最小行政区画内の移転であれば株主総会の決議は不要で、取締役会の決議(取締役会を置かない会社では取締役の過半数の一致)で移転できます11。定款変更が必要な場合は、株主総会議事録と株主リストの添付が必要です11。議事録のひな形と要否の判定は本店移転の議事録の作り方で解説しています。
- 必要書類・申請書: 何を揃えるかは本店移転登記の必要書類、申請書の記入方法は本店移転登記申請書の書き方をご覧ください。申請書の様式と記載例は法務局サイトでも公開されています12。
2. 管轄内か管轄外かで手続きが変わる
本店移転登記は、移転先が同じ法務局の管轄内か、別の法務局の管轄(管轄外)かで手続きが変わります。
- 管轄内: 申請書1件。登録免許税は3万円です1011。
- 管轄外: 変更前の登記所宛てと変更後の登記所宛ての2件の申請書を作成し、2件同時に変更前の登記所へ提出します13。登録免許税は申請1件につき3万円のため1013、合計6万円になります。
管轄外の移転は書類も手順も増えるため、管轄外の本店移転登記ガイドで詳しく解説しています。
3. 税務署への届出
納税地(税金を納める場所の基準となる住所)が変わったときは、税務署へ「異動事項に関する届出」(異動届出書)を異動後速やかに提出します2。
従業員に給与を支払っている会社は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」も必要です。こちらは移転の事実があった日から1か月以内が期限です(所得税法230条)34。
4. 都道府県税事務所・市区町村への届出
法人住民税・法人事業税(地方税)についても、異動の届出が求められるのが一般的です。ただし、様式・名称・期限は自治体ごとに異なります。旧所在地と新所在地それぞれの都道府県税事務所・市区町村のサイトでご確認ください。
5. 年金事務所(健康保険・厚生年金保険)
事業所の所在地が変わったときは、「適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を変更から5日以内に日本年金機構へ提出します(厚生年金保険法施行規則23条)56。管轄内・管轄外で手続き案内と提出先が分かれます614。
6. 労働基準監督署・ハローワーク(労働保険・雇用保険)
労働者を雇用している会社は、次の2つも必要です。
- 労働保険: 「名称、所在地等変更届」を、変更を生じた日の翌日から起算して10日以内に、所轄の労働基準監督署長または公共職業安定所長へ提出します7。
- 雇用保険: 「雇用保険事業主事業所各種変更届」を、変更があった日の翌日から起算して10日以内に、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)へ提出します8。
7. そのほか確認しておきたい変更手続き
役所以外にも、銀行口座・許認可(業種ごとの行政の許可や届出)・取引先・請求書や契約書の記載など、住所を登録している先への変更手続きが発生します。許認可をお持ちの場合は、変更手続きの要否を所管の行政庁へ確認しておくと安心です。
時系列チェックリスト
- 移転前: 定款の本店所在地の定めを確認し、必要な決議(株主総会または取締役会・取締役の決定)を行う11 → 議事録の作り方
- 移転日: 移転の事実発生。ここから各期限のカウントが始まります
- 5日以内: 年金事務所へ所在地変更届56
- 10日以内: 労働保険の変更届7・雇用保険の変更届8
- 2週間以内: 法務局へ本店移転登記を申請1
- 1か月以内: 税務署へ給与支払事務所等の移転届出34
- 速やかに: 税務署へ異動届出書2、都道府県税事務所・市区町村へ届出、銀行・許認可・取引先の住所変更
※ 登記事項証明書の写しを添付書類として使う届出があるため6、登記申請は早めに済ませておくのがおすすめです。
代表取締役の自宅住所が変わった場合
会社の事務所は動いていなくても、代表取締役の住所は株式会社の登記事項です(会社法911条3項14号)15。引っ越しなどで代表取締役の住所が変わったときも、変更から2週間以内に変更の登記が必要です(会社法915条1項)115。
よくある質問(FAQ)
Q1. 登記の期限(2週間)を過ぎてしまったら? 期限後でも登記申請はできます。ただし登記を怠ったときは100万円以下の過料の対象になり得るため9、気づいた時点でできるだけ早く申請してください。個別の事情がある場合は、司法書士や管轄の法務局にご相談ください。
Q2. 費用はいくらかかりますか? 登録免許税は管轄内の移転で3万円、管轄外の移転では申請2件で合計6万円です1013。詳しい内訳は本店移転登記の費用をご覧ください。
Q3. 手続きは自分でできますか? できます。申請書の様式と記載例は法務局サイトで公開されています12。書き方は申請書の書き方ガイドも参考にしてください。
Q4. 定款の変更は必要ですか? 定款の定め方によります。本店所在地を最小行政区画(市区町村など)まで定めている場合、同じ区画内の移転なら定款変更は不要です11。区画をまたぐ移転では定款変更の決議が必要になります。判断に迷う場合は司法書士や管轄の法務局にご確認ください。
Q5. 県をまたいで移転する場合の注意点は? 多くの場合、法務局の管轄が変わる「管轄外の移転」になり、申請が2件になります13。手順の違いは管轄外の本店移転登記ガイドで解説しています。
本店移転登記の書類作成は「wiz法人登記」で
wiz法人登記は、フォームに入力した内容をそのまま反映して、本店移転登記の申請書・議事録などの書類をご自身で作成できるオンラインソフトウェアです(書類作成4,500円・税別)。個別の法的判断や申請の代理は行わず、作成した書類はご自身で確認のうえ法務局に申請いただきます。料金は、当社が比較した主要な登記書類作成サービスの中で最安です(当社調べ・確認日2026-07-15)。管轄外の移転にも同一料金で対応しています。
参照法令・出典(確認日: 2026-07-15)
免責: 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。個別のケースについては、司法書士等の専門家または管轄の法務局・各行政機関にご確認ください。記載内容は確認日時点の法令・公表情報に基づきます。
Footnotes
-
会社法915条1項(変更の登記・2週間以内) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_915 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
国税庁「C1-8 異動事項に関する届出」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_5.htm ↩ ↩2 ↩3
-
所得税法230条(給与等の支払をする事務所の開設等の届出) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033#Mp-At_230 ↩ ↩2 ↩3
-
国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_11.htm ↩ ↩2 ↩3
-
厚生年金保険法施行規則23条(事業主の氏名等の変更の届出・5日以内) https://laws.e-gov.go.jp/law/329M50000100037#Mp-At_23 ↩ ↩2 ↩3
-
日本年金機構「適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄内の場合)の手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150320.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則5条(変更事項の届出・10日以内) https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000008#Mp-At_5 ↩ ↩2 ↩3
-
雇用保険法施行規則142条(事業主の氏名住所等の変更・10日以内) https://laws.e-gov.go.jp/law/350M50002000003#Mp-At_142 ↩ ↩2 ↩3
-
会社法976条1号(過料に処すべき行為) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_976 ↩ ↩2
-
国税庁タックスアンサーNo.7191「登録免許税の税額表」(本店または支店の移転の登記・1箇所につき3万円) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
法務局「株式会社本店移転登記申請書(管轄登記所内移転)記載例」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001364566.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
法務局「商業・法人登記の申請書様式」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html ↩ ↩2
-
法務局「株式会社本店移転登記申請書(管轄登記所外移転)記載例」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252661.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
日本年金機構「適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄外の場合)の手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20141205.html ↩
-
会社法911条3項14号(設立の登記・代表取締役の氏名及び住所) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_911 ↩ ↩2
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。 個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。 記事内の法令・税額等は、記事末尾に記載の確認日時点の情報です。