合同会社の住所(本店)が変わったら、移転の日から2週間以内に法務局へ「本店移転登記」を申請します(会社法915条1項)1。登録免許税は管轄内の移転で3万円、管轄外の移転では合計6万円で、株式会社と同じです2345。
一方、社内の手続きは株式会社と違います。合同会社には株主総会がないため、定款変更が必要なときは原則として総社員の同意で決め(会社法637条)6、株主リストの添付も不要です47。この記事では、合同会社の一般的なケースを前提に、株式会社との違いと必要書類を解説します。
早見表:合同会社の本店移転登記
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期限 | 移転の日から2週間以内1 |
| 登録免許税 | 管轄内3万円/管轄外6万円(1件につき3万円×2件)245 |
| 定款変更の決定 | 原則、総社員の同意(定款に別段の定めがあればそれによる)6 |
| 移転先・時期の決定 | 業務執行社員(または社員)の過半数894 |
| 株主総会議事録・株主リスト | 不要(合同会社にはそもそも株主がいません)4 |
| 申請書の様式 | 法務局の様式3-5(管轄内)・3-6(管轄外)10 |
なお、税務署や年金事務所など登記以外の住所変更手続きは、合同会社でも同様に発生します。全体像は会社の住所変更に必要な手続き一覧をご覧ください。
株式会社との違い
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款変更の決定 | 株主総会の特別決議11 | 総社員の同意が原則6 |
| 移転の具体的決定 | 取締役会または取締役の過半数 | 業務執行社員(または社員)の過半数89 |
| 議事録類 | 株主総会議事録・取締役会議事録 | 総社員の同意書・業務執行社員の決定書4 |
| 株主リスト | 必要(定款変更を伴う場合)7 | 不要4 |
期限(2週間)1、税額(3万円/6万円)23、管轄外移転で申請書2件を旧登記所へ同時提出する経由申請の仕組み(商業登記法51条・52条)は共通です。経由申請の規定は商業登記法118条で合同会社に準用されています1213。
定款変更が必要かどうかの確認
合同会社の定款には「本店の所在地」を必ず記載します(会社法576条1項3号)14。登記されるのは番地まで含めた「本店の所在場所」です(会社法914条3号)15。
- 定款が「当会社は、本店を○県○市に置く」のように最小行政区画(市区町村など)までの記載で、同じ市区町村内で移転する場合:定款変更は不要です。業務執行社員の過半数の一致により移転を決定できます4。
- 市区町村をまたいで移転する場合や、定款に番地まで記載している場合:定款変更が必要です。原則として総社員の同意で行います6。
必要書類(管轄内の移転・様式3-5準拠)
法務局の記載例4に基づく添付書類は次のとおりです。
| 書類 | 必要になる場合 |
|---|---|
| 本店移転登記申請書 | 常に必要 |
| 総社員の同意書 | 定款変更をする場合 |
| 業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面(決定書) | 移転先・移転日の決定を証するため |
| 定款 | 定款の別段の定めにより同意書に代えて決定書を添付する場合 |
| 委任状 | 代理人に申請を委任する場合のみ |
同意書・決定書・委任状のひな形は記載例PDFにそのまま掲載されています4。登録免許税3万円は収入印紙または領収証書で納付します4。
管轄外に移転する場合(要約)
法務局の管轄をまたぐ移転では、手続きが次のように変わります。
- 旧所在地宛て(①)と新所在地宛て(②)の申請書2件を作成し、①②を同時に、変更前の本店所在地の登記所に提出します5。
- 登録免許税は1件につき3万円、合計6万円です52。
- ②の申請書の添付書類は委任状(代理申請の場合)のみです5。
- 2025年4月21日からは、新所在地の登記所への印鑑届書の提出が不要になりました(印鑑記録は職権で移送されます)。ただし印鑑カードは引き継がれないため、必要な場合は登記完了後に新しい登記所へ交付申請します16。
経由申請の詳しい流れや完了までの注意点は管轄外の本店移転登記ガイドで解説しています(株式会社向けの記事ですが、申請の流れは合同会社にも共通します13)。費用全体の考え方は本店移転登記の費用をご覧ください。
定款で別段の定めがある場合の注意
会社法637条は「定款に別段の定めがある場合を除き」総社員の同意と定めています6。定款に「定款変更は業務執行社員の過半数の一致による」といった定めがあれば、それに従って定款変更ができます。この場合、総社員の同意書に代えて決定書を添付しますが、別段の定めがあることを証するために定款の添付が必要です45。自社の定款の定め方によって書類が変わるため、まず定款を確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2週間の期限を過ぎてしまったら? 期限後でも申請はできます。ただし登記を怠ったときは100万円以下の過料(かりょう。刑罰ではない金銭的な制裁)の対象になり得ます(会社法976条1号。持分会社の業務を執行する社員も対象です)17。気づいた時点で早めに申請してください。
Q2. 株主総会議事録や株主リストは本当に不要ですか? 不要です。法務局の合同会社の記載例に掲げられている添付書類は、総社員の同意書・業務執行社員の決定書・定款・委任状のみです45。株主リストは株式会社などで株主総会の決議等を要する登記に添付する書面です7。
Q3. 社員が1人の合同会社の場合は? 総社員の同意は、その社員1人の同意になります。書面の体裁など個別の記載方法は、法務局の記載例4を参考にするか、管轄の法務局にご確認ください。
Q4. 会社ではなく代表社員の自宅住所が変わった場合は? 合同会社を代表する社員の氏名・住所は登記事項です(会社法914条7号)15。代表社員の住所が変わったときも、2週間以内に変更の登記が必要です(会社法915条1項)1。
書類作成サービスについて
wiz法人登記は現在、株式会社の本店移転・目的変更の書類作成(4,500円・税別)に対応しています(合同会社は今後対応予定です)。合同会社の方は、この記事で紹介した法務局の様式・記載例10を使えばご自身で書類を作成できます。
参照法令・出典(確認日: 2026-07-15)
免責: 本記事は合同会社の一般的なケースを前提とした情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。定款の定め方や社員構成によって必要な手続き・書類は変わります。個別のケースについては、司法書士等の専門家または管轄の法務局にご確認ください。記載内容は確認日時点の法令・公表情報に基づきます。
Footnotes
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会社法915条1項(変更の登記・2週間以内。「前三条各号」に914条=合同会社の登記事項を含む) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_915 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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国税庁タックスアンサーNo.7191「登録免許税の税額表」(本店または支店の移転の登記・1箇所につき3万円) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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登録免許税法 別表第一24号(一)ヲ(本店の移転の登記・一箇所につき三万円) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035 ↩ ↩2
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法務局「合同会社本店移転登記申請書(管轄内移転)記載例」(様式3-5) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001365348.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14
-
法務局「合同会社本店移転登記申請書(管轄外移転)記載例」(様式3-6) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001365349.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
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会社法637条(定款の変更・定款に別段の定めがある場合を除き総社員の同意) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_637 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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法務局「株式会社本店移転登記申請書(管轄登記所外移転)記載例」(添付書面に株主リストの記載あり) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252661.pdf ↩ ↩2 ↩3
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会社法590条2項(社員が2人以上の場合、業務は社員の過半数をもって決定) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_590 ↩ ↩2
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会社法591条1項(業務執行社員を定款で定めた場合、業務は業務執行社員の過半数をもって決定) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_591 ↩ ↩2
-
法務局「商業・法人登記の申請書様式」(合同会社の様式3-5・3-6) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html ↩ ↩2
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会社法466条・309条2項11号(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩
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商業登記法51条・52条(本店移転の登記・経由申請) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125#Mp-At_51 ↩
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商業登記法118条(51条〜53条等を合同会社の登記について準用) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125#Mp-At_118 ↩ ↩2
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会社法576条1項3号(持分会社の定款の記載事項・本店の所在地) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_576 ↩
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会社法914条3号(本店及び支店の所在場所)・7号(合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_914 ↩ ↩2
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法務省「本店移転の登記申請における印鑑関係の手続について」(令和7年4月21日から印鑑届書の提出不要・印鑑カードは引き継がれない) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00228.html ↩
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会社法976条1号(登記を怠ったときは100万円以下の過料) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_976 ↩
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。 個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。 記事内の法令・税額等は、記事末尾に記載の確認日時点の情報です。