結論から。支店を移転したとき・廃止したときの登記は、どちらも本店所在地の管轄法務局へ申請します。 支店側の法務局での登記は令和4年9月1日をもって廃止済みのため1、移転先の地域の法務局に別途書類を出す必要はありません。ただし法務省は、本店の所在地でする支店の設置・移転・廃止の登記はこれまでどおり必要だと注意を促しています1。廃止された旧制度の中身や、支店を新しく設ける手続きは支店設置登記のやり方が担当しているので、本記事では移転と廃止だけを扱います。
費用と期限の要点は次のとおりです。移転の登録免許税は支店1箇所につき3万円(登録免許税法別表第一24号(一)ヲ)2。廃止は「登記事項の変更、消滅又は廃止の登記」の区分(同ツ)に当たり、申請1件につき3万円です2。申請期限は、登記事項に変更が生じたときから2週間(会社法915条1項)3。
なお、本記事は株式会社の一般的なケースを前提にします(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社には触れません)。
| 項目 | 支店の移転 | 支店の廃止 |
|---|---|---|
| 申請先 | 本店所在地の管轄法務局1 | 同左1 |
| 様式 | 1-27-2(記載例あり)4 | 専用番号の様式掲載なし4 |
| 登録免許税 | 1箇所につき3万円(ヲ)25 | 申請1件につき3万円(ツ)25 |
| 決定 | 取締役会/取締役の過半数(定款の定めによる・後述)67 | 同左67 |
| 主な添付書類 | 取締役会議事録+委任状(代理人申請時)8 | 決議・決定を証する書面(商登法46条)9 |
| 期限 | 変更後2週間3 | 同左3 |
申請はどこにするか
支店の所在場所は登記事項です(会社法911条3項3号「本店及び支店の所在場所」)10。これが変わる移転や、なくなる廃止をしたら、本店の所在地で変更の登記をします3。
かつては支店側でも登記が必要でしたが、この二重の仕組みは令和4年9月1日に終わっています。法務省の案内には「支店・従たる事務所の所在地における登記が廃止されます」とあり1、廃止後に支店側の法務局へ出した申請は、却下事由(商業登記法24条2号)に該当します111。改正の詳細は支店設置登記のやり方に譲ります。
移転・廃止を決める機関
誰が決めるかは機関設計と定款次第で、一律には言えません。条文の条件をそのまま押さえてください。
- 取締役会設置会社: 会社法362条4項は重要な業務執行の決定の委任を禁じ、その4号に「支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止」があります6。廃止は号に明記されており、移転についても法務局の記載例1-27-2が取締役会議事録を添付書類としています8。
- 取締役会非設置会社: 取締役が2人以上なら、原則は取締役の過半数による決定です。ただし会社法348条2項自体が「定款に別段の定めがある場合を除き」という留保付きなので、定款が別の決め方を定めていればそちらによります7。同条3項2号は「支店の設置、移転及び廃止」を各取締役へ委任できない事項としており7、移転も廃止もここに含まれます。取締役が1人だけなら2項の場面ではなく、定款に別段の定めがない限りその取締役が業務を執行します(同条1項)7。
定款の内容(支店に関する定めの有無を含む)によっては株主総会の決議が関わる場合もあります。自社の決定経路が判然としないときは、法務局か司法書士に相談してください。
支店移転の登記|様式1-27-2で申請する
移転には、法務局の申請書様式一覧に様式1-27-2(記載例PDF付き)が用意されています4。記載例の骨子は次のとおりです8。
| 欄 | 記載例 |
|---|---|
| 登記の事由 | 支店移転 |
| 登記すべき事項 | 別紙のとおり |
| 登録免許税 | 金30,000円 |
| 添付書類 | 取締役会議事録 1通/委任状 1通(代理人による申請のときだけ) |
別紙に書く3項目
記載例1-27-2の別紙(QRコード付き書面申請の例)に現れる項目は次のとおりです8。
- 「支店番号」……対象の支店の番号
- 「支店の所在地」……移転後の住所
- 「原因年月日」……令和○年○月○日移転
支店設置の別紙と違い、原因年月日の末尾は「設置」ではなく「移転」です。
添付書類と定款のチェック
法務局の記載例1-27-2は取締役会設置会社を前提としており、添付書類は取締役会議事録1通、代理人に申請を委任するときは委任状が加わる形です8。機関設計や定款の定めが異なる場合に必要な書面は後述の商業登記法46条の整理によります。見落としやすいのが、記載例1-27-2にある「支店が定款に記載され、定款変更が必要なときは、株主総会議事録の添付を要します。」という注記です8。定款に支店の所在地まで書き込んでいる会社は、移転の前に定款側の対応が要るかを確かめてください。
記載例に添えられた取締役会議事録の例では、「支店移転の時期は、令和○年○月○日とする。」と移転時期を決議で定めています8。もっともこの議事録例はあくまで一例とされ、実情に合わせた作成が求められています8。機関設計や決議方法が違えば、用意する書面も変わります。
押印・収入印紙
申請書に押すのは、代表取締役が登記所に提出した印鑑です8。代理人申請では代理人の認印を押し、その場合は代表取締役の押印は不要とされています8。申請書が複数ページにわたるなら、つづり目への契印も必要です8。収入印紙は貼付台紙に貼りますが、割印はしません8。
支店廃止の登記|専用様式がない中でどう作るか
法務局の様式一覧に支店関係で載っているのは、1-27(設置)と1-27-2(移転)の2つです4。廃止用の記載例には専用番号が振られていないため、申請書は移転の様式を下敷きに、自社のケースへ合わせて作ることになります。
添付書面の拠り所は商業登記法46条(添付書面の通則)です。登記すべき事項について取締役会の決議を要する場合は「申請書にその議事録を添付しなければならない」(2項)9、取締役の一致を要する場合は「その同意又は一致があつたことを証する書面を添付しなければならない」(1項)9。一般的には、取締役会設置会社なら廃止を決議した取締役会議事録、非設置会社なら取締役の過半数の一致を証する書面がこれに当たりますが、必要な書面は取締役の人数や定款の定めによって変わります。自社で用意すべき書面は管轄の法務局または司法書士にご確認ください。
廃止のときの「登記すべき事項」の書きぶりや、定款に支店の定めがあるケースの扱いは、申請前に管轄法務局へ照会しておくのが確実です。
登録免許税|移転はヲ・廃止はツで各3万円
登録免許税法別表第一24号(一)の区分で整理します2。
| 区分 | 対象 | 税額 |
|---|---|---|
| ヲ | 本店・支店(主たる事務所・従たる事務所)の移転の登記 | 1箇所につき3万円 |
| ツ | 「登記事項の変更、消滅又は廃止の登記」(イ〜ソに掲げるものを除く) | 申請1件につき3万円 |
| (参考)ル | 支店・従たる事務所の設置の登記 | 1箇所につき6万円 |
移転はヲの区分で支店1箇所あたり3万円2。記載例1-27-2の税額欄も「金30,000円」です8。2か所を同時に移すなら箇所数で数える定め方になっています2。
廃止には、設置のル・移転のヲのような支店固有の項が置かれておらず、ツ「登記事項の変更、消滅又は廃止の登記」の区分です。 ヲと違って箇所数ではなく申請件数1件あたり3万円という数え方をします2。国税庁の登録免許税額表でも、移転が1箇所につき3万円、「登記事項の変更、消滅または廃止の登記」が1件につき3万円と載っています5。
設置だけは金額が倍の6万円(ル)で、区分も別です2。設置の費用・手続きは支店設置登記のやり方へ。
いつから数えて、いつまでに申請するか
会社法915条1項の期限の起点は、条文上「変更が生じたとき」です3。申請書の作成日や決議の日を機械的に起点とせず、支店の移転・廃止による変更が生じた日を確認したうえで、そこから2週間以内に本店の所在地で変更の登記をします3。記載例1-27-2でも、登記される「原因年月日」は移転の年月日で8、議事録例で定めた「支店移転の時期」がこれに対応します。
初日をどう扱うか・末日が休日ならどうなるかといった数え方の詳細は変更登記の期限は2週間が担当記事です。また、期間内の登記を怠った場合は「この法律の規定による登記をすることを怠ったとき」(会社法976条1号)として100万円以下の過料の対象になり得ます12。過料を科すのは法務局ではなく裁判所です。過料の実情は変更登記を忘れたときの過料で解説しています。
よくある質問
Q. 支店を別の都道府県へ移します。移転先の法務局にも申請が必要ですか。 A. 不要です。支店の所在地における登記は令和4年9月1日に廃止されているため1、どの都道府県へ移そうと、申請先は本店所在地の管轄法務局の1か所だけです。
Q. ある支店の移転と別の支店の廃止を同時に行います。登録免許税はどうなりますか。 A. 移転(ヲ・箇所単位で3万円)と廃止(ツ・申請1件単位で3万円)は別区分です2。まとめて申請するときの税額や書面の組み立ては、内容を示して管轄法務局に照会してください。
Q. 支店の登記を廃止して、同じ場所を営業所として使い続けることはできますか。 A. 登記されるのは会社法上の「支店」の所在場所です10。ある拠点が支店に当たるかは実態で決まる事柄で、この記事で個別の判定はできません。廃止登記の要否も含めて、法務局か司法書士に相談してください。支店と営業所の違いの一般的な整理は支店登記とはで扱っています。
Q. 取締役会のない会社です。支店廃止はどんな書面で決めればよいですか。 A. 取締役が2人以上いれば、定款に別段の定めがない限り過半数の一致で決めます(会社法348条2項)7。登記申請には、一致があったことを証する書面を添付します(商業登記法46条1項)9。書面の具体的な作り方に迷う場合は、法務局か司法書士に確認するのが安全です。
書類作成サービスについて
wiz法人登記が現在対応しているのは、株式会社の本店移転と目的変更の書類作成(4,500円・税別)で、支店の移転・廃止登記の書類作成は対応範囲外です。支店の移転はこの記事で紹介した法務局の様式1-27-2と記載例48を、廃止は管轄法務局への確認を活用して、ご自身で作成してください。支店の手続きとあわせて本店移転や目的変更を行う方は、その部分の書類(株主総会議事録・株主リスト・登記申請書)の作成にご利用いただけます。個別の法的判断や申請の代理は行わず、作成した書類はご自身で確認のうえ法務局に申請いただきます。登録免許税などの実費は別途必要です。
参照法令・出典(確認日: 2026-09-09)
Footnotes
-
法務省「商業登記規則等が改正され、令和4年9月1日から施行されます」(支店の所在地における登記の廃止・本店の所在地における支店の設置、移転又は廃止等の登記は引き続き必要) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00166.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
登録免許税法 別表第一24号(一)ヲ(本店若しくは主たる事務所又は支店若しくは従たる事務所の移転の登記・一箇所につき三万円)・同ツ(登記事項の変更、消滅又は廃止の登記・一件につき三万円)・同ル(支店又は従たる事務所の設置の登記・一箇所につき六万円)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10
-
会社法915条1項(変更の登記)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_915 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
法務局「商業・法人登記の申請書様式」(様式1-27 支店設置登記申請書/様式1-27-2 支店移転登記申請書) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」(会社の商業登記) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm ↩ ↩2 ↩3
-
会社法362条4項4号(支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_362 ↩ ↩2 ↩3
-
会社法348条1項・2項・3項2号(業務の執行・支店の設置、移転及び廃止)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_348 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
法務局「株式会社支店移転登記申請書」記載例(様式1-27-2・PDF) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001384581.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15
-
商業登記法46条1項・2項(添付書面の通則)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125#Mp-At_46 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
会社法911条3項3号(本店及び支店の所在場所)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_911 ↩ ↩2
-
商業登記法24条2号(申請の却下)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125#Mp-At_24 ↩
-
会社法976条柱書・1号(過料に処すべき行為・百万円以下の過料)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_976 ↩
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。 個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。 記事内の法令・税額等は、記事末尾に記載の確認日時点の情報です。