支店登記とは、会社法上の「支店」を設置・移転・廃止したときに、その内容を会社の登記記録に反映させる登記の総称です。 株式会社の登記事項には「本店及び支店の所在場所」が含まれており(会社法911条3項3号)1、支店の所在場所に動きがあれば2週間以内の変更登記が義務になります(会社法915条1項)2。
はじめに、誤解の多いポイントを2つ押さえてください。
- 申請先は、本店の所在地を管轄する法務局の1か所だけです。かつて存在した「支店の所在地における登記」という制度は、令和4年(2022年)9月1日に廃止済みです3。「本店と支店の両方の法務局で登記する」と書いてある解説は、現在の制度には合いません。
- 新しい拠点を出すこと=必ず支店登記、ではありません。 登記の対象になるのは会社法上の「支店」であり、営業所・出張所と呼ばれる拠点がすべて当てはまるわけではありません(後述します)。
本記事は、支店登記の意味・営業所との違い・登記が必要になる場面とならない場面・メリットとデメリットという「やるかどうか」の判断材料に絞って解説します。実際に申請するときの手続き(決定機関・申請書の様式1-27・登記すべき事項の別紙・添付書類)は支店設置登記のやり方で詳しく扱っています。以下、株式会社の一般的なケースを前提とします。
早見表
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| 支店登記とは | 会社法上の「支店」の所在場所を、会社の登記記録に反映させる登記(911条3項3号)1 |
| どこで登記する? | 本店の所在地を管轄する法務局のみ。支店の所在地での登記は令和4年9月1日に廃止済み3 |
| いつまでに? | 設置・移転・廃止から2週間以内(会社法915条1項)2 |
| 営業所・出張所は? | 会社法上の「支店」に当たる場合に登記の対象。名称だけでは決まらない |
| 主なメリット | 支店の所在場所が登記事項証明書で誰にでも確認できる形で公示される14。支店に支配人を置いて登記できる56 |
| 主なデメリット | 登録免許税(設置は支店1箇所につき6万円)7。移転・廃止のたびに登記義務と費用が発生28 |
支店登記とは何か|「支店の所在場所」は登記事項
会社の登記記録には、商号や本店だけでなく拠点の情報も記録されます。会社法911条3項は、株式会社について登記しなければならない事項を並べた規定で、その3号に挙がっているのが「本店及び支店の所在場所」です1。つまり、会社法上の「支店」を持つ会社では、その所在場所が本店と並んで登記記録に載ります。
前提として、会社にとっての「住所」は1つで、会社法4条は「会社の住所は、その本店の所在地にあるものとする」と定めています9。支店は、会社の住所そのものではなく、登記記録上は本店に紐づく拠点情報として現れる、という関係です。
そして、登記事項はいったん登記したら終わりではありません。会社法915条1項により、登記事項に変更が生じたら2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければなりません2。支店の所在場所は登記事項ですから1、支店の新設だけでなく、登記した支店を移すとき・閉じるときにも、そのつど登記が必要です。法務省も、本店の所在地における「支店の設置、移転又は廃止等の登記」が必要である旨を案内しています3。移転・廃止それぞれの必要書類と税額は支店の移転・廃止登記で解説しています。
「支店の所在地での登記」は廃止済み|古い情報に注意
「支店登記 不要」と検索して本記事にたどり着いた方の多くが知りたいのは、この改正の話だと思います。
以前の制度では、支店を設けると、本店側の登記に加えて支店の所在地を管轄する法務局でも登記をしていました。この「支店の所在地における登記」は、令和4年(2022年)9月1日に廃止されました。根拠は同日に施行された商業登記規則等の改正省令(令和4年法務省令第34号ほか)で、法務省の案内は「支店・従たる事務所の所在地における登記が廃止されます」とし、廃止後にこれを申請した場合は「商業登記法第24条第2号により却下されることとなります」と明記しています3。会社法の条文上も、支店の所在地における登記を定めていた930条から932条までは現在「削除」です10。廃止された登記はもはや「登記すべき事項」ではないため、「申請が登記すべき事項以外の事項の登記を目的とするとき」という却下の事由(商業登記法24条2号)11に当たる、という理屈です。
整理すると、次のようになります。
「支店登記は不要になった」という言い方は、前者だけを指していれば正しく、後者まで含めると誤りです。公開年の古い記事には二重の登記を前提にした説明が残っているため、読む際は公開・更新日にご注意ください。
営業所・出張所との違い|名称では決まらない
会社自身の拠点のうち登記事項とされているのは、「本店及び支店の所在場所」です(911条3項3号)1。「営業所」「出張所」「サテライトオフィス」などと呼んでいる拠点も、それが会社法上の「支店」に当たるのであれば登記の対象になり、当たらないのであれば支店の所在場所という登記事項に変動は生じません。
では、どのような拠点が会社法上の「支店」に当たるのでしょうか。ここは名称で機械的に決まるものではなく、その拠点が事業上どのような役割・権限を持っているかという実態に即して判断されます。「営業所」と呼んでいる拠点が支店に当たることも、その逆もあり得ます。本記事では個別の該当性判断は扱いません。自社の拠点が支店に当たるかどうか迷う場合は、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。
制度上の手がかりとして、会社法は支店を「支配人を置いて事業を行わせることができる場所」として位置づけています。会社法10条は、会社は支配人を選任し、「その本店又は支店において、その事業を行わせることができる」と定めています5。支店とは、このように本店と並ぶ事業の拠点として会社法が予定している場所です。
なお、登記上の本店は動かさずに実際の事務所だけを移すケースの整理や取引先への通知は、事務所移転のお知らせと登記の要否で扱っています。
支店登記が必要になる場面・ならない場面
登記が必要になるのは、会社法上の「支店」について変動があったときです。
次の場面では、支店登記の申請は生じません。
- 支店の所在地の法務局への申請(制度自体が廃止済み)3
- 会社法上の「支店」を設置していない場合。支店の所在場所という登記事項に変動がなければ、915条1項の変更登記義務も生じません2。ただし、ある拠点が支店に当たるかどうかの判断は前述のとおり実態によりますので、迷う場合は管轄の法務局または司法書士にご確認ください
支店登記のメリット
メリットは、制度の仕組みから裏づけられるものに絞って挙げます。
1. 支店の存在と所在場所が、誰でも確認できる形で公示される
支店の所在場所は登記事項ですから1、登記をすると会社の登記事項証明書にその支店が記録されます。商業登記法10条1項は、何人も、手数料を納付して登記事項証明書の交付を請求できると定めており4、同条2項により、法務省令で定める場合を除き他の登記所の登記官に対しても請求できます4。取引先や金融機関を含む誰もが、公的な証明書でその支店の存在と所在場所を確認できる、ということです。
なお、支店名義の銀行口座の開設や、営業所単位の許認可の要件として支店の登記が求められるかどうかは、各金融機関・各行政庁・各法令の定めによります。支店登記を目的にする前に、その手続きの窓口に要件をお確かめください。
2. 支店に支配人を置き、その登記ができる
会社法11条1項により、支配人は「会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」使用人です12。会社法10条は、この支配人を本店または支店に置いて事業を行わせることを認めています5。支配人を選任したとき(および代理権が消滅したとき)は、本店の所在地でその登記をします(会社法918条)6。
支店を任せる責任者に包括的な代理権を与え、そのことを登記で公示する、という使い方が制度上用意されているわけです。
支店登記のデメリット
1. 登録免許税がかかる
支店に関する登記には、そのつど登録免許税がかかります。
| 登記 | 登録免許税 |
|---|---|
| 支店の設置 | 支店1箇所につき6万円(別表第一24号(一)ル)7 |
| 支店の移転 | 1箇所につき3万円(同ヲ)8 |
| 支店の廃止など登記事項の変更・消滅・廃止の登記(イからソに掲げるものを除く) | 申請1件につき3万円(同ツ)13 |
| 支配人の選任・代理権消滅の登記 | 申請1件につき3万円(同ヨ)14 |
登録免許税法別表第一24号(一)ルは「支店又は従たる事務所の設置の登記」について支店の数1箇所につき6万円と定めています7。本店移転の登記(1箇所につき3万円8)より高い点は見落とされがちです。具体的にいくらになるかは申請の組み方にもよるため、管轄の法務局にご確認ください。
2. 変更のたびに登記の手間と費用が続く
支店の所在場所は登記事項なので、移転や廃止のたびに2週間以内の変更登記が必要になり2、上記の登録免許税もそのつどかかります。拠点の入れ替わりが多い事業では、この維持コストが積み重なります。期限の数え方は変更登記の期限は2週間をご覧ください。
3. 登記を怠ると過料の対象になり得る
会社法976条は、取締役等が「この法律の規定による登記をすることを怠ったとき」を、100万円以下の過料に処すべき行為として挙げています15。過料は裁判所の裁判により科されるもので、必ず科されると決まっているわけではありませんが、登記した支店を放置してよい理由にはなりません。詳しくは変更登記を忘れたときの過料で解説しています。
手続きはどう進めるか(概要)
支店の設置は、取締役会設置会社では原則として取締役会の決議事項です。会社法362条4項4号が「支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止」を取締役に委任できない事項として挙げているためです16。取締役会がない会社での原則は、取締役(2人以上いる場合はその過半数)による決定ですが、定款で別の決め方を定めることもできます(会社法348条2項)17。
決定後は、本店の所在地を管轄する法務局に登記を申請します。申請書の様式(1-27)・登記すべき事項の別紙の書き方・添付書類・押印のルールまで、手続きの全体は支店設置登記のやり方で記載例にそって解説しています。
よくある質問
Q. 営業所を借りて従業員を置くだけでも、支店登記は必要ですか。 A. 登記の対象は会社法上の「支店」です1。その拠点が支店に当たるかどうかは名称ではなく実態に即して判断されるため、一律には答えられません。判断に迷う場合は、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。
Q. 「支店登記は不要になった」と聞きました。何もしなくてよいのですか。 A. 不要になったのは「支店の所在地における登記」だけです3。本店の所在地における支店の設置・移転・廃止等の登記は今も必要で3、怠れば過料の対象になり得ます15。
Q. 支店を閉鎖したときは、何か手続きが要りますか。 A. 支店の所在場所は登記事項ですから、廃止したときも本店の所在地で変更の登記が必要です23。登録免許税は、登記事項の変更・消滅・廃止の登記(イからソに掲げるものを除く)として申請1件につき3万円の区分が定められています13。具体的な申請方法は管轄の法務局にご確認ください。
Q. 本店と支店は何が違うのですか。 A. 会社の住所は本店の所在地にあるものとされます(会社法4条)9。本店は会社に1つの、会社の住所となる拠点であり、支店はそれ以外に登記される事業の拠点です。どちらも所在場所が登記事項である点は共通です1。
書類作成サービスについて
wiz法人登記は現在、株式会社の本店移転・目的変更の登記書類の作成(4,500円・税別)に対応しており、支店の設置・移転・廃止の登記には対応していません。支店の登記をご自身で申請する場合は、支店設置登記のやり方で紹介している法務局の様式・記載例をご利用ください。支店の開設にあわせて本店移転や目的変更を行う場合は、その部分の書類作成(株主総会議事録・株主リスト・登記申請書)に本サービスをご利用いただけます。フォームに入力した内容をそのまま反映して書類を作成するオンラインソフトウェアであり、個別の法的判断や申請の代理は行いません。作成した書類はご自身で確認のうえ法務局に申請いただきます。登録免許税などの実費は別途必要です。
参照法令・出典(確認日: 2026-09-09)
Footnotes
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会社法911条3項3号(株式会社の設立の登記・登記事項「本店及び支店の所在場所」)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_911 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10
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会社法915条1項(変更の登記・2週間以内)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_915 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
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法務省「商業登記規則等が改正され、令和4年9月1日から施行されます」(1 支店の所在地における登記の廃止について) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00166.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11
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商業登記法10条1項・2項(登記事項証明書の交付等)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125#Mp-At_10 ↩ ↩2 ↩3
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会社法10条(支配人・本店又は支店において事業を行わせることができる)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_10 ↩ ↩2 ↩3
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会社法918条(支配人の登記)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_918 ↩ ↩2
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登録免許税法 別表第一24号(一)ル(支店又は従たる事務所の設置の登記・1箇所につき6万円)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035 ↩ ↩2 ↩3
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登録免許税法 別表第一24号(一)ヲ(本店若しくは主たる事務所又は支店若しくは従たる事務所の移転の登記・1箇所につき3万円)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035 ↩ ↩2 ↩3
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会社法4条(住所)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_4 ↩ ↩2
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会社法 第九百三十条から第九百三十二条まで(削除)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩
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商業登記法24条2号(申請の却下)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125#Mp-At_24 ↩ ↩2
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会社法11条1項(支配人の代理権)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_11 ↩
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登録免許税法 別表第一24号(一)ツ(登記事項の変更、消滅又は廃止の登記・申請1件につき3万円)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035 ↩ ↩2
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登録免許税法 別表第一24号(一)ヨ(支配人の選任の登記又はその代理権の消滅の登記・申請1件につき3万円)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035 ↩
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会社法976条柱書・1号(過料に処すべき行為・登記をすることを怠ったとき)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_976 ↩ ↩2
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会社法362条4項4号(取締役会の権限等)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_362 ↩
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会社法348条2項(業務の執行)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_348 ↩
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。 個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。 記事内の法令・税額等は、記事末尾に記載の確認日時点の情報です。