結論から。支店を設置したときの登記は、本店の所在地を管轄する法務局にだけ申請します。 支店・従たる事務所の所在地における登記は、令和4年9月1日に廃止されました1。同日から支店の所在地における登記は不要となり、仮に申請しても商業登記法24条2号により却下されます1。実際、会社法930条から932条までは現在「削除」となっています2。
ただし、本店の所在地における支店の設置の登記は引き続き必要です1。「支店の登記がなくなった」わけではなく、出す場所が1か所に減っただけ、という理解が正確です。
そしてもうひとつ。支店の設置を決める機関は、取締役会の有無と定款の定めによって変わります。 取締役会設置会社では取締役会の決議事項で、この決定を取締役に委任することはできません(会社法362条4項4号)3。取締役会を設置していない会社では、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役が2人以上いるときは取締役の過半数で決定します(会社法348条2項)4。取締役が1人の会社の扱いは後述します。
本記事は、株式会社が支店を新しく設置したときの登記に絞って解説します(監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社は対象外です)。
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| どこに申請する? | 本店の所在地を管轄する法務局のみ1 |
| 支店の所在地の法務局には? | 申請しない。令和4年9月1日に廃止・申請すれば却下(商登法24条2号)1 |
| 誰が決める? | 取締役会設置会社=取締役会3 / 非設置会社=定款に別段の定めがなければ、取締役が2人以上のとき取締役の過半数4。株主総会の権限は会社法295条と定款による5 |
| いつまでに? | 変更が生じた日から2週間以内(会社法915条1項)6 |
| 登録免許税 | 支店1箇所につき6万円(登録免許税法別表第一24号(一)ル)7 |
| 使う様式 | 法務局の様式1-27「支店設置登記申請書」8 |
| 添付書類 | 記載例1-27では取締役会議事録(代理人に委任するときは委任状も)9。機関設計・定款により異なる |
令和4年9月1日に何が変わったのか
法務省は、商業登記規則等の一部を改正する省令(令和4年法務省令第34号)等の施行により、令和4年9月1日から支店・従たる事務所の所在地における登記が廃止されると案内しています1。同じ案内の中で、「同日から、支店の所在地における登記は不要となり、仮にこれを申請しても、商業登記法第24条第2号により却下されることとなります」と明記されています1。
商業登記法24条2号は、「申請が登記すべき事項以外の事項の登記を目的とするとき」を却下事由として挙げています10。支店の所在地における登記は、もはや登記すべき事項ではなくなったため、この号に当たるという整理です。
会社法の側も同じ形になっています。かつて支店の所在地における登記を定めていた第930条から第932条までは、現在の条文では「第九百三十条から第九百三十二条まで 削除」となっています2。
一方で、法務省の同じ案内は「なお、本店の所在地における支店の設置、移転又は廃止等の登記は引き続き必要ですので、御注意ください。」と釘を刺しています1。株式会社の登記事項を列挙する会社法911条3項の3号は「本店及び支店の所在場所」であり11、ここは変わっていません。登記事項に変更が生じたときは2週間以内に本店の所在地で変更の登記をする、という会社法915条1項の原則6がそのまま働きます。
公開年の古い解説記事には、旧制度(本店の所在地と支店の所在地の両方に登記する)を前提にしたものが残っています。支店の所在地の法務局あてに申請書を用意してしまうと、その分が却下されることになります。
誰が決めるのか|取締役会の有無で条文が変わる
支店の設置は、機関設計によって決定機関が分かれます。取締役会設置会社と、取締役会を設置していない会社とで、根拠条文も文言も別です。
取締役会設置会社
会社法362条4項は、取締役会は「次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない」と定め、その4号に「支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止」を挙げています3。つまり取締役会の決議で決めることになり、代表取締役の判断だけで進めることはできません。
法務局の記載例1-27でも、添付書類は「取締役会議事録 1通」とされています9。
取締役会を設置していない会社
会社法348条2項は、取締役が2人以上いる場合、株式会社の業務は「定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する」と定めています4。そのうえで同条3項は、前項の場合に各取締役へ委任できない事項として、2号に「支店の設置、移転及び廃止」を挙げています4。
条文の文言が362条4項4号(「支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止」)とわずかに違う点に注意してください。348条3項2号は「移転」を含み、362条4項4号は「変更」という語を使っています34。
なお、348条1項・2項はいずれも「定款に別段の定めがある場合を除き」という条件付きです4。会社法348条の適用の範囲では、定款で決定方法を別に定めている会社はその定めによることになります。また取締役が1人しかいない会社では、そもそも2項の「取締役が二人以上ある場合」に当たりません。この場合は、定款に別段の定めがある場合を除き、その取締役が会社の業務を執行することになります(同条1項)4。
株主総会で決めることもあるのか
会社法295条1項は、株主総会は「この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」と定めています5。取締役会設置会社については、同条2項が「この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる」としています5。
つまり、支店設置の決定経路は機関設計と定款の定め方によって変わり、「株主総会は一切関係しない」と言い切れるものではありません。自社の定款と機関設計を確認したうえで、判断に迷う場合は管轄の法務局または司法書士にご確認ください。
定款変更は必要か
支店の所在地は、定款に必ず書かなければならない事項ではありません。会社法27条が株式会社の定款の記載事項として挙げているのは、目的・商号・本店の所在地・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額・発起人の氏名または名称および住所であり、支店は挙げられていません12。
もっとも、会社が自社の定款に支店に関する定めを置いている場合は、その定めとの関係を確認する必要があります。定款変更が要る場面と要らない場面の切り分けは定款変更が必要ないケースで整理しています。
申請書の書き方|法務局の様式1-27を上から順に
法務局「商業・法人登記の申請書様式」ページには、**様式1-27「支店設置登記申請書」**が、記載例(PDF)と申請書様式(Word/PDF)のセットで掲載されています8。支店を移転したときは様式1-27-2「支店移転登記申請書」が別に用意されています8。
記載例1-27に沿って、記入欄を上から見ていきます9。
| 欄 | 記載例の内容 |
|---|---|
| 会社法人等番号 | 分かる場合に記載する |
| フリガナ・商号 | フリガナは会社の種類を表す部分(株式会社)を除いて片仮名で左詰め |
| 本店 | 登記されている本店の所在場所 |
| 登記の事由 | 支店設置 |
| 登記すべき事項 | 別紙のとおり |
| 登録免許税 | 金6万円 |
| 添付書類 | 取締役会議事録 1通 / 委任状 1通(代理人に委任した場合のみ) |
登記の事由と登記すべき事項
記載例1-27の「登記の事由」欄は「支店設置」です9。「登記すべき事項」欄は「別紙のとおり」とし、内容は別紙に書きます9。
別紙の例は次の3項目です9。
- 「支店番号」○
- 「支店の所在地」○県○市○町○丁目○番○号
- 「原因年月日」令和○年○月○日設置
見落としやすいのが「支店番号」です。記載例の別紙にはこの欄があり9、実際に何を記入するかは法務局の最新の様式・記載例でご確認ください。
なお、登記すべき事項はオンライン申請やQRコード(二次元バーコード)付き書面申請でデータ送信することもでき、CD-R等に記録して提出することもできます9。CD-Rによる場合、記載例は「別添CD-Rのとおり」等と記載して申請書と共に提出するよう案内しています9。「登記すべき事項」の別紙そのものの作り方は目的変更登記申請書の書き方でも扱っています。
押印と契印
記載例1-27では、申請人である会社の代表取締役が押す印について「登記所に提出した印鑑を押します。」と注記されています9。代理人が申請する場合については、代理人の住所・氏名を記載して代理人の印鑑(認印)を押すこと、そして「この場合、代表取締役の押印は、必要ありません。」と案内されています9。
複数ページになる場合の契印についても注意書きがあります。記載例は、登記申請書(収入印紙貼付台紙を含む)が複数ページになる場合は各ページのつづり目に契印をする必要があるとしたうえで、契印は「登記申請書に押した印鑑(代表取締役が法務局に提出した印鑑又は代理人の印鑑)と同一の印鑑を使用する必要があります」としています9。
収入印紙は貼付台紙に貼りますが、記載例は「割印をしないで貼ってください」と注意しています9。
添付書類|記載例1-27が挙げているもの
記載例1-27の添付書類欄に挙げられているのは、取締役会議事録 1通と委任状 1通(代理人に申請を委任した場合のみ必要)の2つです9。役員変更登記の記載例に現れる就任承諾書や印鑑証明書は、ここには挙げられていません。
記載例には取締役会議事録の例も添えられています。決議事項は「当会社の支店を下記の地に設置すること。」とし、「支店設置の場所」と「支店設置の時期」を記載する形です9。議事録には出席取締役および監査役の全員が記名押印する例になっています9。
ただし、この記載例そのものが「一例です。会社の実情に合わせて作成してください。」と断っています9。示されているのは取締役会設置会社を想定した1つの型であり、機関設計・定款の定め・決議の方法・申請方法によって必要な書面は変わります。取締役会を設置していない会社の場合を含め、自社で用意すべき書面は管轄の法務局または司法書士にご確認ください。
登録免許税は支店1箇所につき6万円
登録免許税法別表第一24号(一)ルは、「支店又は従たる事務所の設置の登記」について、支店または従たる事務所の数1箇所につき6万円と定めています7。記載例1-27の登録免許税欄も「金6万円」です9。
本店移転の3万円と混同しやすいところです。 同じ別表第一24号(一)の次の項目ヲは「本店若しくは主たる事務所又は支店若しくは従たる事務所の移転の登記」で、こちらは1箇所につき3万円です7。設置は6万円、移転は3万円と、金額が違います。
支店を同時に2か所設置する場合は箇所数に応じて計算します(1箇所につき6万円という定め方のためです)7。本店移転の費用は本店移転登記の費用にまとめています。
期限は2週間
会社法915条1項は、会社において911条3項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、2週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならないと定めています6。支店の所在場所は911条3項3号の登記事項ですから11、支店を設置したときもこの2週間が働きます。
2週間をいつから数えるのか、末日が行政機関の休日に当たるときはどうなるのかといった期間の数え方は変更登記の期限は2週間で扱っています。期限を過ぎた場合の過料については変更登記を忘れたときの過料をご覧ください。
よくある質問
Q. 支店の所在地の法務局にも申請書を出す必要はありますか。 A. ありません。法務省は、令和4年9月1日から支店の所在地における登記は不要となり、仮に申請しても商業登記法24条2号により却下されると案内しています1。本店の所在地における支店の設置の登記は引き続き必要です1。
Q. 登記上の本店は動かさずに、営業所を新しく借りるだけの場合も登記が要りますか。 A. 支店の所在場所は911条3項3号の登記事項ですから11、支店を設置したのであれば本店の所在地で登記が必要になります(915条1項)6。もっとも、ある拠点が会社法上の「支店」に当たるかどうかは、その拠点の実態や会社の運営状況によって異なり、本記事では個別の該当性判断は扱いません。該当するかどうかの判断は管轄の法務局または司法書士にご確認ください。登記上の本店を動かさない場合の一般的な整理は事務所移転のお知らせと登記の要否で扱っています。
Q. 支店設置と本店移転を同じ時期に行う場合はどうなりますか。 A. 登録免許税法別表第一24号(一)では、支店の設置はル、本店・支店の移転はヲと別の区分に置かれています7。具体的な税額の計算や同時申請の可否・書面の作り方は、申請内容を示したうえで管轄の法務局にご確認ください。複数の変更をまとめて申請する場合の考え方は目的変更と本店移転の同時申請で扱っています。
Q. 取締役が1人しかいない会社ではどう決めればよいですか。 A. 会社法348条2項は「取締役が二人以上ある場合」の決定方法を定めた規定です4。取締役が1人の会社はこれに当たりません。定款に別段の定めがある場合を除き、取締役が会社の業務を執行するとされています(同条1項)4。具体的な書面の整え方は管轄の法務局または司法書士にご確認ください。
書類作成サービスについて
wiz法人登記は現在、株式会社の本店移転・目的変更の書類作成(4,500円・税別)に対応しており、支店設置登記の書類作成には対応していません。支店設置については、この記事で紹介した法務局の様式1-27と記載例89をご利用いただき、ご自身で作成いただくことになります。本店移転や目的変更もあわせて必要な方は、その分の書類作成(株主総会議事録・株主リスト・登記申請書)にご利用いただけます。個別の法的判断や申請の代理は行わず、作成した書類はご自身で確認のうえ法務局に申請いただきます。登録免許税などの実費は別途必要です。
参照法令・出典(確認日: 2026-08-10)
Footnotes
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法務省「商業登記規則等が改正され、令和4年9月1日から施行されます」(1 支店の所在地における登記の廃止について) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00166.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10
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会社法 第九百三十条から第九百三十二条まで(削除)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩ ↩2
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会社法362条4項4号(取締役会の権限等・支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_362 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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会社法348条1項・2項・3項2号(業務の執行・支店の設置、移転及び廃止)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_348 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
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会社法295条1項・2項(株主総会の権限)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_295 ↩ ↩2 ↩3
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会社法915条1項(変更の登記)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_915 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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登録免許税法 別表第一24号(一)ル(支店又は従たる事務所の設置の登記・一箇所につき六万円)・同ヲ(本店若しくは主たる事務所又は支店若しくは従たる事務所の移転の登記・一箇所につき三万円)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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法務局「商業・法人登記の申請書様式」(様式1-27 支店設置登記申請書/様式1-27-2 支店移転登記申請書) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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法務局「株式会社支店設置登記申請書」記載例(様式1-27・PDF) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001384579.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19
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商業登記法24条2号(申請の却下・申請が登記すべき事項以外の事項の登記を目的とするとき)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125#Mp-At_24 ↩
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会社法911条3項3号(株式会社の設立の登記の登記事項・本店及び支店の所在場所)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_911 ↩ ↩2 ↩3
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会社法27条(定款の記載又は記録事項・3号 本店の所在地)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_27 ↩
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。 個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。 記事内の法令・税額等は、記事末尾に記載の確認日時点の情報です。