結論を先に3つ書きます。
1つ目。「代表取締役の辞任」には2つの型があります。取締役の地位ごと辞める型と、代表取締役の地位だけを辞任して、取締役として会社に残る型です。会社法は、代表取締役を「取締役の中から」定めるものとしているため(取締役会設置会社では362条3項、それ以外の会社では349条3項)12、取締役を辞任すれば、代表取締役であり続ける前提も失われます。ただし、2つ目の型(地位のみの辞任)があるのは、取締役の中から代表取締役を別途定めている会社の場合です。代表取締役を定めておらず取締役が各自会社を代表する会社(349条1項・2項)1では、代表権は取締役の地位そのものから生じるため、取締役として残りながら代表権だけを辞任するという独立した型はありません。取締役が1人だけの会社も同様です。どちらの型なのかを最初に決めないと、辞任届の文面も、そのあとの登記も定まりません。
2つ目。代表取締役の地位だけを辞任する場合の手続きについて、本記事で確認した会社法の関連条文には、直接定めた規定を確認できませんでした。代表取締役の選定方法(取締役会の決議・定款・定款の定めに基づく取締役の互選・株主総会の決議)12や定款の定め方によって、会社側で必要になる手続きや登記の添付書面の扱いが変わりえます。本記事では条文で確認できる範囲を場合分けして示し、個別の判断は管轄の法務局・司法書士への確認に委ねます。
3つ目。後任がいないまま辞任しても、代表取締役の仕事から当然に離れられるわけではありません。代表取締役が欠けた場合または定款で定めた員数が欠けた場合には、辞任により退任した代表取締役は、原則として、新たに選定された代表取締役が就任するまで、なお代表取締役としての権利義務を有するとされています(会社法351条1項)3。この立場は一般に権利義務代表取締役と呼ばれます。ただし、取締役ごと辞任する型では、残る取締役の員数や346条1項(取締役の権利義務)との関係で当てはまり方の判断が分かれる場面があります(本文で後述します)34。権利義務が続いている間は、辞任を原因とする退任の登記をその時点で申請することはできない、という帰結につながります。
本記事の対象は、株式会社のうち監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社のいずれでもない会社です。また、本記事は辞任に絞ります。辞任届という書面そのものの書き方・押印は辞任届の書き方、代表取締役の交代の全体像(選定方法別の必要書類、解職・死亡による退任)は代表取締役の変更登記で扱っています。
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| 代表取締役だけ辞めて取締役に残れるか | 代表取締役を別途定めている会社では「地位のみの辞任」という型がある。各自代表の会社(349条1項・2項)・取締役1人の会社には独立した型がない。手続きは選定方法・定款の定めで変わりうるため、事前に管轄の法務局・司法書士へ12 |
| 後任がいないまま辞任したら | 代表取締役が欠けるか員数を欠くときは、原則として後任の就任まで権利義務が続く(351条1項)3 |
| 権利義務はいつまで続くか | 新たに選定された代表取締役(一時代表取締役の職務を行うべき者を含む)が就任するまで3 |
| どうしても後任が決まらないときは | 裁判所が、利害関係人の申立てにより、一時代表取締役の職務を行うべき者を選任できる(351条2項)3 |
| 辞任はいつでもできるか | 会社と役員の関係は委任(330条)で、委任は各当事者がいつでも解除できる(民法651条1項)。ただし相手方に不利な時期の解除などでは損害賠償の問題が残る(同条2項)56 |
| 辞任届の書き方 | 辞任届の書き方へ。押印は商業登記規則61条8項の分岐に注意78 |
| 登記の期限 | 変更から2週間以内(915条1項)9。権利義務が続く場合は、後任の就任などで登記すべき変更が生じた時点が問題になる3 |
| 登記を怠ると | 100万円以下の過料の対象(976条1号)10。詳細は変更登記の過料へ |
代表取締役の地位と取締役の地位は別のもの
出発点は、会社法が2つの地位を分けて設計していることです。
取締役は、原則として各自が株式会社を代表します。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでないとされています(会社法349条1項・2項)1。代表取締役を定める方法は、機関設計で分かれます。
- 取締役会設置会社: 代表取締役の選定・解職は取締役会の職務で(362条2項3号)、選定は取締役の中から行わなければならないとされています(同条3項)2
- 取締役会を設置していない会社: 349条3項が挙げる3つの方法(定款で直接定める・定款の定めに基づく取締役の互選・株主総会の決議)のいずれかで、取締役の中から代表取締役を定めることができます1
どちらのルートでも「取締役の中から」定めます12。代表取締役に選定されると、株式会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を持ちます(349条4項)1。代表取締役の氏名と住所は登記事項です(911条3項14号)9。
この構造から、辞め方も2つに分かれます。
| 型 | 辞めるもの | 残るもの | 主に読む節 |
|---|---|---|---|
| 型1 | 取締役の地位(代表取締役である前提も失われる) | なし | 次節 |
| 型2 | 代表取締役の地位のみ | 取締役の地位 | その次の節 |
型2があるのは、取締役の中から代表取締役を別途定めている会社の場合です。代表取締役を定めていない会社では、代表権は取締役の地位そのものから生じるため(349条1項・2項)1、切り離して辞任する対象になる「代表取締役の地位」がそもそもありません。
型1|取締役ごと辞任する
取締役の地位を辞任する型です。代表取締役は取締役の中から定めるものである以上12、取締役でなくなれば、代表取締役の地位もその前提を欠きます。法務局の記載例1-10(辞任等により新たな役員(取締役)が就任した場合)が扱っているのはこの型で、辞任届の本文も「貴社の取締役を辞任いたしたく」という文面です8。
この型で確認することは、代表取締役に固有のものを除けば、取締役の辞任一般と同じです。
- 辞任届: 書面の形・押印・印鑑証明書の要否は辞任届の書き方で1か所ずつ扱っています。代表取締役だった人の辞任届は押印のルールが厳しめに定められているので、次の登記の節でも触れます78
- 後任の選任と登記: 手続き全体・様式・必要書類は役員変更登記のやり方、後任者側の書面は就任承諾書の書き方へ
- 員数の問題: 辞任によって取締役が欠け、または法律・定款で定めた員数を欠くことになるときは、取締役としての権利義務が続きます(346条1項)4。あわせて代表取締役も欠けるときは、次の権利義務代表取締役の話(351条1項)が同時に問題になります3
型2|代表取締役の地位のみを辞任して、取締役として残る
「社長は退くが、取締役としては残る」という型です。この型では、辞任の対象は代表取締役の地位だけで、取締役としての任期は従来どおり続きます(任期の数え方は取締役の任期へ)。
まず前提を確認します。この型が観念できるのは、取締役の中から代表取締役を別途定めている会社です。代表取締役その他会社を代表する者を定めておらず、取締役が各自会社を代表している会社(349条1項・2項)1では、代表権は取締役の地位そのものから生じるため、取締役として残りながら代表権だけを辞任するという独立した型はありません。取締役が1人だけの会社も同様で、他に会社を代表する者を定めない限りその1人が会社を代表することになるため(349条1項)1、代表権だけを手放して取締役として残るという形は取れません。
そのうえで、正直に書いておくべきことがあります。代表取締役の地位のみの辞任について、本記事で確認した会社法の関連条文には、その手続きを直接定めた規定を確認できませんでした。条文から確認できるのは、選定のルートが会社ごとに違うことまでです12。
- 取締役会の決議で選定された代表取締役(362条2項3号・3項)2
- 定款で直接定められた代表取締役(349条3項)1
- 定款の定めに基づく取締役の互選で定められた代表取締役(349条3項)1
- 株主総会の決議で定められた代表取締役(349条3項)1
選定のルートが違えば、地位のみの辞任を受け止める会社側の手続き(辞任の意思表示を誰が受けるか、会社側の決議・同意が必要になるか、登記にどの書面を添付するか)も同じにはなりません。たとえば定款で特定の人を代表取締役と定めている会社では、その人が代表取締役でなくなることは定款の定めとの関係を整理する必要がある、というように、定款の書き方ひとつで扱いが変わりえます。この論点は登記先例・実務の蓄積で処理されている領域で、本記事が根拠にできる一次ソース(条文・法務局の公表資料)だけでは個別の結論を断定できません。地位のみの辞任を予定している場合は、辞任届を書く前に、定款と選定方法を確認したうえで、管轄の法務局の登記相談または司法書士に確認してください。
なお、この型でも登記は必要です。代表取締役の氏名・住所は登記事項なので(911条3項14号)、代表取締役でなくなったという変更の登記を2週間以内に申請することになります(915条1項)9。
辞任はいつでもできるのか|会社法330条と民法651条
株式会社と役員(取締役・会計参与・監査役)との関係は、委任に関する規定に従うとされています(会社法330条)5。そして委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができます(民法651条1項)6。取締役の地位の辞任が本人の意思表示でできるのは、この線によります。雇用契約の解約申入れ(民法627条)の話ではありません。代表取締役の地位のみの辞任(型2)については、前の節で述べたとおり、選定方法・定款の定めにより会社側の手続きの扱いが変わりうる点に注意してください。
ただし、無条件ではありません。民法651条2項は、相手方に不利な時期に委任を解除したときなどには、相手方の損害を賠償しなければならないとし、あわせて「やむを得ない事由があったときは、この限りでない」というただし書を置いています6。辞任そのものができることと、辞任に伴う責任の問題が残ることは、条文上別の話です。
さらに代表取締役の場合、次の節の権利義務の仕組みがあるため、「辞任の意思表示をした」ことと「代表取締役の仕事から離れられた」ことの間にズレが生じえます。辞任の時期や効力が争いになりそうな事情があるときは、司法書士または弁護士にご相談ください。
後任がいない場合|権利義務代表取締役(会社法351条1項)
本記事の中心です。条文を構造どおりに読みます。351条1項はこう定めています。
代表取締役が欠けた場合又は定款で定めた代表取締役の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した代表取締役は、新たに選定された代表取締役(次項の一時代表取締役の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお代表取締役としての権利義務を有する。3
3つの要素に分解できます。
1. 働く場面。「代表取締役が欠けた場合」または「定款で定めた代表取締役の員数が欠けた場合」です3。代表取締役が1人の会社でその1人が辞任すれば、前者に当たります。後任の選定・就任と入れ替わる形で辞任し、欠けも員数不足も生じないのであれば、この項の出番はありません。
2. 対象になる人。条文が挙げる退任原因は「任期の満了又は辞任」の2つです3。解任された場合や死亡した場合は、この文言に含まれていません(死亡については、委任は受任者の死亡によって終了するとされています。民法653条1号)11。解任・死亡による退任と登記は代表取締役の変更登記で扱います。
3. いつまで続くか。「新たに選定された代表取締役が就任するまで」です。この「新たに選定された代表取締役」には、次項(351条2項)の一時代表取締役の職務を行うべき者が含まれます3。つまり終わらせ方は、後任を選定して就任してもらうか、一時代表取締役の選任を得るかです。
権利義務を「有する」のであって、辞任がなかったことになるわけではありませんが、代表取締役としての権利義務は続きます。辞任届を出したのに代表取締役の立場が続く、という状態はここから生じます。
なお、この項の当てはまり方が単純なのは、取締役として残る型2(地位のみの辞任)の場合です。取締役の地位ごと辞任する型1では、残る取締役の員数や346条1項(取締役の権利義務)が働くかどうかと絡んで、権利義務の有無の判断が分かれる場面があります。型1で欠員が生じそうなときは、管轄の法務局または司法書士に確認してください。
取締役の権利義務(346条1項)との対比
351条1項は、役員(取締役など)について同じ構造を定めた346条1項と平行になっています34。
| 取締役など(役員) | 代表取締役 | |
|---|---|---|
| 条文 | 346条1項4 | 351条1項3 |
| 働く場面 | 役員が欠けた場合、または法律・定款で定めた員数が欠けた場合4 | 代表取締役が欠けた場合、または定款で定めた員数が欠けた場合3 |
| 対象になる退任原因 | 任期の満了・辞任4 | 任期の満了・辞任3 |
| 終わり | 新たに選任された役員(一時役員の職務を行うべき者を含む)の就任4 | 新たに選定された代表取締役(一時代表取締役の職務を行うべき者を含む)の就任3 |
型1(取締役ごと辞任)で会社の取締役がいなくなる・員数を欠く場合には、346条1項と351条1項の両方が同時に働く形になります。取締役1人の会社で、その1人が取締役を辞任するケースが典型です。346条1項の側は、任期満了の文脈も含めて取締役の任期で扱っています。
なお、この2つの条文があるからといって「辞任をあきらめる」必要はありません。欠員が生じないように、辞任と同じ日に後任の選定・就任をそろえるのが、権利義務状態を作らないもっとも直接的な方法です。
一時代表取締役(仮代表取締役)|会社法351条2項・3項
後任がどうしても決まらない場合の出口として、条文は一時代表取締役を用意しています。
351条2項は、1項に規定する場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時代表取締役の職務を行うべき者を選任することができる、と定めています3。主語は裁判所です。会社や辞任した本人が自分で「一時代表取締役」を置けるという制度ではなく、裁判所への申立てを経ます。また、選任するかどうかは「必要があると認めるとき」という裁判所の判断にかかっています3。
3項は報酬の定めです。裁判所は、一時代表取締役の職務を行うべき者を選任した場合には、株式会社がその者に対して支払う報酬の額を定めることができます3。
申立ての要件・手続き・費用は本記事の一次ソースの範囲外です。検討する場合は、司法書士または弁護士にご相談ください。
登記|辞任を証する書面・印鑑・権利義務の間の退任登記
辞任を証する書面と2週間
代表取締役の氏名・住所は登記事項なので(911条3項14号)、辞任で代表取締役でなくなれば変更の登記が必要で、期限は変更が生じたときから2週間以内です(915条1項)9。起算の数え方は変更登記の期限、怠った場合の過料(100万円以下。976条1号)10は変更登記の過料で扱っています。
退任による変更の登記の申請書には、退任を証する書面の添付が必要です(商業登記法54条4項)12。辞任の場合、ここに入るのが辞任届です8。
辞任届に押す印鑑
辞任届は誰の印鑑でもよいわけではありません。商業登記規則61条8項は、辞任を証する書面に押した印鑑について市町村長作成の証明書の添付を求めています。対象者は括弧書きで限定されており(登記所に印鑑を提出した者がいる会社ではその提出者、いない会社では会社の代表者)、押した印鑑がその人の登記所提出印と同一であるときは添付不要とするただし書があります7。登記所に会社実印を届け出ていた代表取締役の辞任は、まさにこの条項の中心場面です。分岐の全体と辞任届のひな形は辞任届の書き方で扱っています8。
また、代表取締役が交代して、書面申請のために新しく印鑑を登記所に提出する場合、印鑑の提出は当該印鑑を明らかにした書面で行い、会社の代表者などが提出者になります(商業登記規則9条1項)13。前の代表取締役が届け出ていた印鑑の扱いを含め、印鑑関係の手続きは管轄の法務局にご確認ください。
権利義務が続く間は、退任の登記だけを先に申請できない
351条1項が働く場面では、辞任により退任した代表取締役は、後任(一時代表取締役を含む)の就任まで「なお代表取締役としての権利義務を有する」とされています3。この文言のもとでは、後任が就任するまで、その人が代表取締役の立場から完全に離れたという状態が生じていないことになるため、辞任を原因とする退任の登記をその時点で単独で申請することはできない、という帰結になると読めます。後任の就任がそろった段階で、退任と就任の登記をあわせて申請する流れです(役員の辞任と就任の登記は合わせて1件として申請できます)8。
辞任届を出した時期と登記できる時期がずれる場合の原因年月日・期限の扱いは、事案ごとの判断が入るところです。管轄の法務局の登記相談で確認してください。
FAQ|よくある質問
Q. 代表取締役だけを辞めて、取締役として会社に残ることはできますか。
A. 取締役の中から代表取締役を別途定めている会社では、「代表取締役の地位のみの辞任」という型があります。代表取締役を定めておらず取締役が各自会社を代表する会社(349条1項・2項)1や、取締役が1人だけの会社では、代表権は取締役の地位そのものから生じるため、取締役として残りながら代表権だけを辞任する独立した型はありません。地位のみの辞任の手続きについては、本記事で確認した会社法の関連条文に直接定めた規定を確認できず、代表取締役の選定方法(取締役会の決議・定款・取締役の互選・株主総会の決議)12と定款の定め方によって、会社側で必要になる手続きや添付書面が変わりえます。定款と選定方法を確認のうえ、管轄の法務局または司法書士に確認してから辞任届を作ることをおすすめします。
Q. 後任が決まっていなくても辞任できますか。
A. 取締役の地位の辞任について、後任の存在が意思表示自体を妨げるわけではありません(委任はいつでも解除できます。民法651条1項)6。代表取締役の地位のみの辞任は、前述のとおり選定方法・定款の定めで扱いが変わりえます。いずれの型でも、辞任で代表取締役が欠ける・員数を欠くことになるときは、原則として後任(一時代表取締役を含む)が就任するまで代表取締役としての権利義務が続き(351条1項)3、その間は退任の登記をそのまま申請できない扱いになります。相手方に不利な時期の解除にあたる場合の損害賠償の問題(民法651条2項)も残ります6。
Q. 権利義務代表取締役の状態はいつ終わりますか。
A. 条文上、新たに選定された代表取締役(351条2項の一時代表取締役の職務を行うべき者を含む)が就任するまでです3。後任を選定して就任してもらうのが通常の終わらせ方で、どうしても決まらない場合の制度として、裁判所が利害関係人の申立てにより選任する一時代表取締役があります3。
Q. 解任された代表取締役や死亡した代表取締役にも権利義務は続きますか。
A. 351条1項が対象として挙げる退任原因は「任期の満了又は辞任」の2つで、解任・死亡はこの文言に含まれていません3。死亡については、委任が受任者の死亡によって終了する(民法653条1号)という別の規定もあります11。解任・死亡それぞれの帰結と登記は代表取締役の変更登記で扱っています。
Q. 辞任届には「代表取締役を辞任する」と書けばよいですか。それとも「取締役を辞任する」ですか。
A. どちらの型の辞任かで変わります。取締役ごと辞める型1なら、法務局の記載例の辞任届は「貴社の取締役を辞任いたしたく」という文面です8。代表取締役の地位のみを辞任する型2では、辞任の対象が代表取締役の地位であることが読み取れる文面にする必要がありますが、記載例として公表された標準の文例を本記事では確認できていないため、管轄の法務局の登記相談で文面まで確認することをおすすめします。書面の形式(表題・日付・住所氏名・宛先・押印)は辞任届の書き方を参照してください。
Q. 登記の期限はいつから2週間ですか。
A. 登記事項に変更が生じたときから2週間以内です(915条1項)9。後任がそろっていて欠員が生じない辞任であれば、辞任による変更を基準に考えることになります。351条1項の権利義務が続く場合は、後任の就任などによって登記すべき変更が生じた時点が問題になるため、一律には言えません。起算の考え方は変更登記の期限へ、個別の判断は管轄の法務局へ。
Q. 取締役1人の会社で、その1人が辞任したらどうなりますか。
A. 取締役の側は346条1項(役員の権利義務)4、代表取締役の側は351条1項3が、いずれも働きうる場面です。原則として、後任が就任するまで取締役・代表取締役としての権利義務が続く形になり、退任の登記もその間はできない扱いになります。後任の選任とセットで進めることを検討し、具体的な段取りは司法書士または管轄の法務局にご相談ください。
書類作成サービスについて
wiz法人登記が対応しているのは、株式会社の本店移転と目的変更の登記書類の作成(4,500円・税別)です14。役員変更登記(代表取締役の辞任・交代を含む)の書類作成には対応していません。取締役ごと辞任し、新たな取締役が就任する場合(型1)の登記は、その場合を扱う法務局の記載例1-10と申請書様式のページ815をもとに、ご自身で作成いただくことになります。代表取締役の地位のみを辞任する場合(型2)は記載例1-10の対象外なので、該当する様式・添付書面を管轄の法務局または司法書士にご確認ください。
代表取締役の交代と前後して本店移転や事業目的の変更を予定している場合は、その部分にwiz法人登記をご利用いただけます。wiz法人登記は、フォームに入力した内容をそのまま反映して、本店移転・目的変更の登記申請書・株主総会議事録・株主リストをご自身で作成できるオンラインソフトウェアです(4,500円・税別)。個別の法的判断や申請の代理は行わず、作成した書類はご自身で確認のうえ法務局に申請いただきます。登録免許税などの実費は別途必要です。取締役会設置会社・監査役設置会社には対応していません14。
参照法令・出典(確認日: 2026-09-03)
免責
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。株式会社のうち監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社でない会社の一般的なケースを対象としています。代表取締役の地位のみの辞任の手続き、権利義務が続く間の登記の可否・原因年月日、一時代表取締役の選任の申立てなど、登記先例や個別事情による判断が必要な事項は本記事では結論を示していません。個別のケースについては、司法書士または管轄の法務局にご相談ください。記載内容は確認日(2026-09-03)時点の法令・公表情報に基づきます。
Footnotes
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会社法349条(株式会社の代表・1項 取締役は株式会社を代表する、ただし他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合はこの限りでない・2項 各自代表・3項 取締役会設置会社を除く株式会社は定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって取締役の中から代表取締役を定めることができる・4項 業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_349 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18
-
会社法362条(取締役会の権限等・2項3号 代表取締役の選定及び解職・3項 取締役会は取締役の中から代表取締役を選定しなければならない)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_362 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
-
会社法351条(代表取締役に欠員を生じた場合の措置・1項 権利義務代表取締役・2項 裁判所による一時代表取締役の職務を行うべき者の選任・3項 報酬)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_351 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19 ↩20 ↩21 ↩22 ↩23 ↩24 ↩25
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会社法346条1項(役員等に欠員を生じた場合の措置・任期の満了又は辞任により退任した役員は新たに選任された役員の就任まで役員としての権利義務を有する)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_346 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
-
会社法330条(株式会社と役員等との関係・委任に関する規定に従う)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_330 ↩ ↩2
-
民法651条(委任の解除・1項 各当事者がいつでも解除できる・2項 相手方に不利な時期の解除等の損害賠償とやむを得ない事由のただし書)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-At_651 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
商業登記規則61条8項(辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書。対象者の括弧書きによる限定とただし書)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023#Mp-At_61 ↩ ↩2 ↩3
-
法務局 記載例1-10「株式会社役員変更登記申請書(辞任等により新たな役員(取締役)が就任した場合)」(辞任届の例とその注・添付書類欄・辞任と就任の登記は合わせて1件として申請できる) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252657.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
-
会社法911条3項14号(代表取締役の氏名及び住所は登記事項)・915条1項(変更の登記・二週間以内・本店の所在地)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_915 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
会社法976条1号(この法律の規定による登記をすることを怠ったときは百万円以下の過料)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_976 ↩ ↩2
-
民法653条1号(委任の終了事由・委任者又は受任者の死亡)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-At_653 ↩ ↩2
-
商業登記法54条4項(退任による変更の登記の申請書にこれを証する書面を添付)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125#Mp-At_54 ↩
-
商業登記規則9条1項(印鑑の提出は当該印鑑を明らかにした書面をもってしなければならない・提出者に会社の代表者を含む)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023#Mp-At_9 ↩
-
wiz法人登記 サービス仕様(当社確認 2026-08-24: 対応は株式会社の本店移転・目的変更の書類作成〔4,500円・税別〕。役員変更・取締役会設置会社・監査役設置会社は非対応) https://app.wiztouki.com ↩ ↩2
-
法務局「商業・法人登記の申請書様式」(第1 株式会社/2 役員変更) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html ↩
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。 個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。 記事内の法令・税額等は、記事末尾に記載の確認日時点の情報です。