結論から。株主リストは、登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合などに、登記申請書に添付する書面です(商業登記規則61条)12。 記載するのは、「議決権数上位10名の株主」か「議決権割合の多い順に加算して3分の2に達するまでの株主」のいずれか少ない方です12。その株主ごとに氏名または名称・住所・株式数・議決権数・議決権割合を書き、会社の代表者(登記申請人)が証明します123。
本記事は株式会社の一般的なケースを対象に、株主リストが必要になる場面、誰を書くか、何を書くか、様式の入手先までを、法令と法務省の案内に基づいて解説します。まずは早見表からどうぞ。
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| いつ必要? | 登記すべき事項につき株主総会(種類株主総会)の決議を要する場合、または株主全員(種類株主全員)の同意を要する場合12 |
| 誰を書く? | 決議を要する場合: 議決権数上位10名か、議決権割合が3分の2に達するまでの株主の、いずれか少ない方12 |
| 何を書く? | 氏名または名称・住所・株式数・議決権数・議決権割合の5点(株主総会決議の場合)12 |
| 誰が証明? | 会社の代表者(登記申請人)23 |
| 様式は? | 法務省の案内ページに書式例・記載例(Excel/PDF)が公開されている2 |
株主リストとは|平成28年10月1日から登記の添付書面に
株主リストは、株主の氏名または名称・住所・株式数・議決権数などを記載し、会社の代表者が証明する書面です12。法務省の案内によると、平成28年10月1日以降の株式会社等の登記の申請では、添付書面として株主リストが必要となる場合があります(商業登記規則61条2項・3項)2。施行日(平成28年10月1日)より前に株主総会が行われた場合でも、施行日以降に登記を申請するときは添付が必要とされています2。
名前が似ている「株主名簿」とは別の書面です。株主名簿と株主リストでは記載内容(議決権数など)が異なるため、株主名簿を添付しても株主リストの代わりにはなりません3。
株主リストが必要になる場面|61条3項と61条2項の2パターン
法務省の案内では、株主リストの添付が必要になるのは次の2つの場合と説明されています2。
多くの変更登記で関係するのは1のパターンです。たとえば、事業目的の変更や、定款変更を伴う本店移転は、定款の変更として株主総会の決議が必要になり(会社法466条)4、この決議は特別決議です(会社法309条2項)5。つまり「登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合」に当たるため、登記申請には株主リストを添付します1。定款変更が必要かどうかの判定は定款変更の要否の記事で解説しています。
2のパターンは、登記すべき事項について総株主の同意が必要な場合に使うものです。1と2では、後述のとおり記載する株主の範囲と記載事項が異なります12。自分の手続きがどちらに当たるか分からない場合は、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。
なお、書面決議(みなし決議)で済ませた場合も株主リストは必要です(後述)12。
誰を書くか|「上位10名」か「3分の2まで」の少ない方
株主総会の決議を要する場合(61条3項)に記載するのは、その決議で議決権を行使できる総株主の議決権数に対する議決権割合が高い順に上位となる株主のうち、次のいずれか少ない人数の株主です1。
法務省の案内でも「議決権数上位10名の株主」か「議決権割合が2/3に達するまでの株主」のいずれか少ない方と説明されており、2/3に達するまでの株主は議決権割合の多い方から加算する必要があるとされています2。
注意点が2つあります。
- その決議で議決権を行使できない株式(自己株式など)を持つ株主は記載しません。 一方、株主総会に欠席した株主や、出席しても議決権を行使しなかった株主は、議決権を行使できた以上、記載の対象に含まれます23。
- 同順位の株主が複数いる場合は全員書きます。 法務省のFAQでは、上位10名を記載するケースで第10位の株主が複数いるときは、その全員を記載する必要があるとされています3。
判定例で確認(架空の単純例)
以下は61条3項の基準の当てはめ方を示すための架空の単純な例です。種類株式や議決権制限がない前提で計算しています。
例1: 株主が1人の会社(いわゆる1人会社)
株主Aが議決権の100%を持っている場合、Aの1名で議決権割合の合計が3分の2に達します。「10名」と「1名」の少ない方は1名なので、記載するのはAの1名だけです。
例2: 株主が5名の会社
議決権割合がA40%・B30%・C15%・D10%・E5%だとします。割合の多い順に加算すると、A(40%)→A+B(70%)の時点で3分の2(約66.7%)に達します。「10名」と「2名」の少ない方は2名なので、記載するのはAとBの2名です。C・D・Eを書く必要はありません。
何を書くか|記載事項は5点
株主総会の決議を要する場合(61条3項)の株主リストには、対象となる株主ごとに次の5点を記載します12。
記載のしかたで迷いやすい点は、法務省のFAQで次のように案内されています。
- 株主が法人の場合: 住所欄には本店所在地を記載します3。
- 住所の細かさ: 原則として地番まで記載しますが、会社が地番まで把握していない場合は、把握している限度で記載し、地番まで記載できない理由を注記します3。
なお、株主全員の同意を要する場合(61条2項)は範囲と項目が変わり、株主全員について氏名または名称・住所・株式数(種類株式発行会社は種類と種類ごとの数)・議決権数を記載します(議決権割合の記載は求められていません)12。この場合、議決権を行使できない株式(自己株式など)を持つ株主も記載が必要とされています3。
誰が証明するか|代表者(登記申請人)
株主リストは、原則として登記申請人である会社の代表者が作成します3。法務省の案内でも、記載事項の5点を「代表者が証明」すると説明されています2。
株主総会の時点と登記申請の時点で代表者が変わっている場合は、登記申請時の代表者(新しい代表者)が作成します3。
様式・記載例はどこにある?
法務省の案内ページ「「株主リスト」が登記の添付書面となりました」に、書式例・記載例がExcelとPDFで公開されています2。掲載されている書式は、おおむね次の構成です2。
- 簡易書式(書式例A-1): 簡易な内容の株主リストを作る場合の書式・記載例
- 書式例1-1: 株主総会または種類株主総会の決議を要する場合(61条3項)の書式。10名を記載する例、3分の2までを記載する例、種類株式発行会社の例などの記載例つき
- 書式例1-2: 株主全員または種類株主全員の同意を要する場合(61条2項)の書式・記載例
このほか、一定の場合には、法人税の確定申告で使う「同族会社等の判定に関する明細書」などを添付する書式も利用できるとされています3。ダウンロードした書式に、前の見出しまでで整理した対象株主と5点の記載事項を書き込めば、株主リストの形になります。
書面決議(みなし決議)でも株主リストは必要
株主総会を実際に開かず、株主全員の書面または電磁的記録による同意で決議があったものとみなす方法(会社法319条1項のみなし決議)を使った場合も、株主リストは必要です。商業登記規則61条3項は、決議があったものとみなされる場合を含むと明記しています1。法務省の案内でも、株主総会決議を省略する場合(会社法319条1項)にも株主リストの添付が必要とされています2。
みなし決議の議事録の書き方は、目的変更の議事録の記事で解説しています。
FAQ|よくある質問
Q. 株主名簿と株主リストは何が違いますか?
A. 記載内容が異なる別の書面です。法務省のFAQでは、株主名簿と株主リストでは記載内容(議決権数など)が異なるため、株主名簿の添付で株主リストの添付を不要にすることはできないとされています3。
Q. 株主が1人だけの会社でも株主リストは必要ですか?
A. 株主の人数にかかわらず、登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合には必要です12。1人会社の一般的なケースでは、上の判定例のとおり、その株主1名を記載することになります。
Q. 1回の株主総会で複数の事項を決議した場合、株主リストは何通必要ですか?
A. 法務省のFAQでは、原則として登記すべき事項ごとに作成するとされています。ただし、各議案を通じて記載内容が変わらない場合は、その旨を明記することで1通にまとめることもできるとされています3。
Q. 本店移転でも株主リストは必要ですか?
A. 定款変更(株主総会の決議)が必要になる本店移転では必要です14。定款変更が不要な範囲の移転で、ほかに決議を要する登記事項もない場合は、61条3項の場面に当たりません1。ケースごとの必要書類は本店移転の必要書類チェックリストと本店移転の議事録の記事で整理しています。
株主リストは議事録・申請書とセットで整える書類です
株主リスト単体の作成は難しくありませんが、株主総会議事録の決議内容や申請書の記載と、日付・株主構成の整合をとる必要があります。
wiz法人登記は、フォームに入力した内容をそのまま反映して、本店移転・目的変更の登記申請書類一式(株主リストを含む)をご自身で作成できるオンラインソフトウェアです(4,500円・税別)。個別の法的判断や申請の代理は行わず、作成した書類はご自身で確認のうえ法務局に申請いただきます。なお、登録免許税などの実費は別途必要です。
参照法令・出典(確認日: 2026-07-19)
免責
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。個別のケースについては、司法書士または管轄の法務局にご相談ください。記載内容は確認日(2026-07-19)時点の法令・公表情報に基づきます。
Footnotes
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商業登記規則61条2項・3項(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19 ↩20 ↩21 ↩22 ↩23 ↩24 ↩25 ↩26
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法務省 「株主リスト」が登記の添付書面となりました https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00095.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19 ↩20 ↩21 ↩22 ↩23 ↩24 ↩25
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法務省 株主リストに関するよくあるご質問 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00103.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13
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会社法466条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩ ↩2
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会社法309条2項(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。 個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。 記事内の法令・税額等は、記事末尾に記載の確認日時点の情報です。