バーチャルオフィスへの本店移転|登記手続き・費用と注意点

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結論から。バーチャルオフィス(事業者と契約して、事業用の住所などの提供を受けるサービス)の住所へ本店を移転する場合も、本店移転登記の申請書の様式・添付書類・登録免許税額は、法務局の記載例と登録免許税法が定めるとおりで、移転先の種類による区別なく共通です12 登録免許税の課税標準(税額計算の基準)は「本店又は支店の数」であり、1箇所につき3万円です23。そして、本店を移転したときの変更登記の期限は、移転日から2週間以内です(会社法915条1項)4

一方で、登記とは別に確認しておきたい点があります。宅建業(宅地建物取引業)のように、免許の要件として事務所の形態が審査される業種があるためです5。「登記の手続き」と「許認可の要件」は別の問題として整理するのが、この移転を考えるときの出発点です。

本記事は株式会社の一般的なケースを対象に、バーチャルオフィスへの本店移転の登記手続きと、移転前に確認したい注意点を、法令・法務局の記載例・行政庁の手引きに基づいて解説します。まずは早見表からどうぞ。

知りたいこと答え
登記手続きは特別?申請書の様式・添付書類・税額は通常の本店移転と共通12
申請期限は?移転日から2週間以内(会社法915条1項)4
登録免許税は?同一管轄内(管内)3万円・管轄をまたぐ(管外)は旧・新各3万円の計6万円123
定款変更は必要?定款に記載された本店の所在地の範囲外へ移転する場合は、株主総会の決議による定款変更が必要67
許認可業種の注意は?宅建業など、事務所の形態に要件がある免許あり。移転前に所管の行政庁へ確認5

登記手続きは移転先の種類で変わらない

本店の所在場所は、株式会社の登記事項です(会社法911条3項3号)8。登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に変更の登記をしなければなりません(会社法915条1項)4。この仕組みは、移転先がどのような建物・契約形態かにかかわらず適用されます。

申請書に書く内容も、法務局が公表している記載例のとおりです。記載例で求められるのは、商号、移転前後の本店の所在場所、登記の事由(「本店移転」)、移転日、登録免許税額、添付書類などです1。添付書類は、株主総会議事録(定款変更をする場合)、株主リスト、取締役会議事録(取締役会を設置しない会社では取締役の過半数の一致を証する書面)、代理人に委任した場合の委任状です1

登録免許税も同様です。登録免許税法は、本店移転の登記の税額を「本店若しくは主たる事務所又は支店若しくは従たる事務所の数」を課税標準として、1箇所につき3万円と定めています2。国税庁の税額表でも、本店または支店の移転の登記は1箇所につき3万円です3。課税標準は本店の「数」であり、移転先の建物の種類ではありません。

1点だけ、日付に注意してください。記載例では、登記すべき事項の日付は議事録に記載されている移転の時期(実際に移転した日)を記載し、本店移転の日より前に本店移転の登記を申請することはできないとされています1。バーチャルオフィスとの契約日ではなく、本店を移転した日が基準です。

手続きの流れと費用|管内移転と管外移転

手続きの中身は、移転先が同じ法務局の管轄区域内か(管内移転)、別の管轄か(管外移転)で変わります。

  • 管内移転: 管轄の法務局は変わらず、登録免許税は3万円です23。手順の詳細は管内移転の手続きで解説しています。
  • 管外移転: 変更前の本店所在地宛てと変更後の本店所在地宛ての2通の申請書を作成し、両方を同時に、変更前の本店所在地を管轄する法務局へ提出します1。登録免許税は各申請書につき3万円、合計6万円です12。手順の詳細は管外移転の手続きで解説しています。

移転の決議から登記完了後の届出までの全体像は本店移転の全体の流れにまとめています。また、賃貸オフィスへ移転する場合の注意点は賃貸オフィスへの本店移転をご覧ください。

注意点1|許認可業種は「事務所」の要件を確認する

登記手続きが共通である一方、免許・許認可には事務所に関する要件が定められている場合があります。ここが、バーチャルオフィスへの移転を検討するときに最も確認すべき点です。

例として、東京都の宅建業免許申請の手引きを見てみます。宅建業法3条1項は、事務所を「本店、支店その他の政令で定めるものをいう。」と規定しており、本店・支店のほか、「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所」で宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くものが事務所として取り扱われます5

そして手引きでは、「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所」とは、物理的にも社会通念上事務所と認識される程度の形態を備えていることが必要と考えられるとされ、事務所内には、対面可能な応接セット(執務場所と明確に区別されていること)、従事する人数分の机・椅子を含む執務場所、固定電話(開通済)の設置が必要とされています5

事務所の形態についても、物理的にも業務を継続的に行える機能を持ち、社会通念上も事務所として認識される程度の独立した形態を備えていること、事務所として使用する権原(権利)を有していることが必要とされ、一般の戸建て住宅やマンション等の集合住宅の一室(一部)を事務所として使用すること、一つの事務所を他の法人等と使用すること、仮設の建築物を事務所とすることは原則として認めていないと明記されています5

バーチャルオフィスがこれらの要件を満たすかどうかは、契約内容や施設の実態によって異なり、判断するのは免許を所管する行政庁です。宅建業に限らず、免許・許認可の取得や維持を予定している場合は、移転先を決める前に、所管の行政庁の窓口に確認してください。

なお、許認可との関係では、登記の「目的」欄も見られます。東京都の宅建業の手引きでは、履歴事項全部証明書の目的欄に宅建業を営む旨の記載がない場合は、免許が必要な理由を書面で都に提出し、速やかに目的欄に記載する手続を法務局で行うよう案内されています5。事業目的と許認可の関係は事業目的の書き方で解説しています。

注意点2|定款変更の要否を確認する

定款には、本店の所在地を記載しなければなりません(会社法27条3号)7。移転先が定款に記載された本店の所在地の範囲外である場合は、株主総会の決議による定款変更が必要です(会社法466条)6。法務局の記載例でも、添付書類の株主総会議事録には「定款変更をする場合に必要です」と注記されています1

定款変更が必要かどうかは、移転先の住所と定款の記載を突き合わせて確認します。判断の仕方は本店移転で定款変更が必要になる場合で解説しています。

注意点3|登記の基準は「実際に移転した日」

繰り返しになりますが、本店の所在場所は登記事項であり8、会社法は、登記事項に変更が生じたときに変更の登記をすると定めています4。法務局の記載例でも、登記すべき事項の日付は実際に移転した日を記載するとされています1

バーチャルオフィスの契約開始日と本店の移転日は、必ずしも一致しません。決議で定めた移転の時期を基準に、そこから2週間以内という期限を数えてください4。期限の数え方は変更登記の期限の数え方で解説しています。

FAQ|よくある質問

Q. 自宅とバーチャルオフィス、どちらに移転するのがよいですか?

A. どちらが適しているかは会社の事情によって異なるため、本記事で一律の判断はできません。確認しておきたい共通のポイントは2つです。第一に許認可です。宅建業の例では、住宅の一室の使用や他の法人等との事務所の共用は原則として認めないとする取扱いが手引きに示されており5、自宅・バーチャルオフィスのいずれでも要件の確認が必要です。第二に定款です。移転先が定款に記載された本店の所在地の範囲外なら定款変更が必要になります67。なお、登記申請の様式と税額はどちらへの移転でも共通です12。個別の事情を踏まえた判断は、司法書士または所管の行政庁にご相談ください。

Q. 本店は移転せず、住所だけ借りて登記を変えることはできますか?

A. 本店の所在場所は登記事項です8。会社法は、登記事項に「変更が生じたとき」に変更の登記をすると定めており4、法務局の記載例でも、登記すべき事項の日付は議事録に記載されている移転の時期(実際に移転した日)を記載するとされています1。つまり、登記は実際の本店の移転を前提とした制度です。実態を伴わない登記の扱いなど個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご相談ください。

移転先が決まったら、登記書類の準備はオンラインで

バーチャルオフィスへの移転でも、作成する登記書類は通常の本店移転と共通です1。決議・書類作成・申請という流れを押さえれば、ご自身での申請も十分に可能です。

wiz法人登記は、フォームに入力した内容をそのまま反映して、本店移転の変更登記に必要な株主総会議事録・株主リスト・登記申請書をご自身で作成できるオンラインソフトウェアです(4,500円・税別)。個別の法的判断や申請の代理は行わず、作成した書類はご自身で確認のうえ法務局に申請いただきます。なお、登録免許税などの実費は別途必要です。


参照法令・出典(確認日: 2026-07-19)

免責

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。許認可の要件の充足性を含む個別のケースについては、司法書士、管轄の法務局または所管の行政庁にご相談ください。記載内容は確認日(2026-07-19)時点の法令・公表情報に基づきます。

Footnotes

  1. 法務局 株式会社本店移転登記申請書(管轄登記所外に移転する場合)記載例 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252661.pdf 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

  2. 登録免許税法 別表第一24号(一)ヲ(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035 2 3 4 5 6 7 8

  3. 国税庁 タックスアンサーNo.7191 登録免許税の税額表 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm 2 3 4

  4. 会社法915条1項(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 2 3 4 5 6

  5. 東京都住宅政策本部 宅地建物取引業免許申請の手引 https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/application/491menkyo00 2 3 4 5 6 7

  6. 会社法466条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 2 3

  7. 会社法27条3号(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 2 3

  8. 会社法911条3項3号(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 2 3

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。 個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。 記事内の法令・税額等は、記事末尾に記載の確認日時点の情報です。

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