結論から。会社名を変えるときは、株主総会の特別決議で定款を変更したうえで、変更が生じた日から2週間以内に商号変更の登記を申請します(会社法915条1項)1。 登録免許税は3万円で、添付書類は株主総会議事録と株主リストです2。
確認しておきたいのが順番です。法務局は記載例の注記で、商号及び本店が同一の会社が既に存在する場合には商号の変更の登記をすることができないため、定款の変更を行う前に、本店を管轄する登記所でそのような会社の有無を必ず確認するよう案内しています2。決議を済ませてから登記できないと分かる事態を避けるための調査で、無料でできるとされています2。
本記事は株式会社の一般的なケースを対象に、法務局の記載例1-11(株式会社変更登記申請書・商号の変更)と条文に基づいて手順を整理します。
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| 決議 | 株主総会の特別決議による定款変更(会社法466条・309条2項11号)34 |
| 期限 | 変更が生じた日から2週間以内(会社法915条1項)1 |
| 登録免許税 | 3万円2 |
| 添付書類 | 株主総会議事録・株主リスト(代理人に委任した場合は委任状)2 |
| 申請前にすること | 同一商号・同一本店の会社がないかの調査(無料)2 |
| 申請書の「商号」欄 | 旧商号を書く。新商号は別に併記する2 |
なぜ定款変更が要るのか
会社法は、会社はその名称を商号とすると定めています(会社法6条1項)3。そして株式会社の定款には、目的・商号・本店の所在地などを記載しなければならないとされています(会社法27条2号)3。
商号は定款に必ず書かれている事項なので、会社名を変えることは定款を変えることと同じです。株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができるとされています(会社法466条)3。
この決議は特別決議です。会社法309条2項11号が挙げる「第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会」の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合はその割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合はその割合)以上に当たる多数をもって行わなければならないとされています(会社法309条2項)4。定款の変更は第六章に置かれているため、商号を変えるための定款変更はこの特別決議の対象になります34。なお同条3項・4項には、これらとは別の決議要件が定められた定款変更の場面があり、定款変更がすべて同じ要件になるわけではありません4。また同条2項は、この決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げないとしています4。自社の定款に追加の要件がないかは確認が必要です。
記載例1-11の株主総会議事録も、議案を「定款変更の件」とし、定款第1条(商号)を新しい商号に変更する形になっています2。
決議の前に|同一商号・同一本店の調査
記載例1-11の議事録には、次の注記が付いています2。
商号及び本店が同一の会社が既に存在する場合には商号の変更の登記をすることができませんので、定款の変更を行う前に、本店を管轄する登記所でそのような会社の有無を必ず確認してください。
これは商業登記法の定めに対応しています。商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあっては本店)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができないとされています(商業登記法27条)5。商号だけ、あるいは本店だけが同じでも該当しません。両方が同一のときに登記できないという条文です。
法務局は、この調査は無料でできるとし、調査の方法については「商業・法人登記の申請書様式」ページの関連リンク「同一商号・同一本店の調査を行う方法について」を参照するよう案内しています26。
注記が「定款の変更を行う前に」と書いている点が実務上のポイントです。法務局は、商号変更の登記ができない事態を避けるために、定款変更を行う前に確認するよう案内しています2。候補の商号が決まった段階で調べる、という順番です。
似た商号や、同じ商号でも本店の所在場所が違う会社の存在そのものを禁じる条文ではありません。ただし登記の可否とは別に、何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならないという定めがあります(会社法8条1項)3。所在場所が同一といえるかどうかの判断は、管轄の法務局にご確認ください。
申請書の書き方|「商号」欄には旧商号を書く
記載例1-11で注意したいのが、申請書の商号欄です2。
| 欄 | 何を書くか |
|---|---|
| 商号 | 旧商号を記載してくださいとされています2 |
| (新商号 ○○商事株式会社) | 商号欄に併記する形で新しい商号を示します2 |
| 登記の事由 | 商号の変更2 |
| 登記すべき事項「商号」 | 商号は、新商号を記載してくださいとされています2 |
| 登記すべき事項「原因年月日」 | 「令和○年○月○日変更」2 |
申請書の頭に書くのは登記簿に今載っている会社の名前(旧商号)で、登記すべき事項として書くのがこれから登記する新商号、という整理です。
フリガナの扱い
記載例1-11は、商号のフリガナについて次のように案内しています2。
- 会社の種類を表す部分(株式会社)を除いて、片仮名で、左に詰めて記載する2
- 間に空白がある場合には、空白を削除した文字をフリガナとして登録する2
- このフリガナは国税庁法人番号公表サイトを通じて公表される2
- 登記事項証明書には、フリガナは表示されない2
必要書類
記載例1-11の添付書類欄には、次の3つが挙げられています2。
| 書類 | 通数 | 備考 |
|---|---|---|
| 株主総会議事録 | 1通 | 定款変更を決議した議事録2 |
| 株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト) | 1通 | 商業登記規則61条3項7 |
| 委任状 | 1通 | 代理人に申請を委任した場合のみ必要2 |
商号変更は定款変更の決議を伴うため、株主リストが必ず付いてきます。誰を何人載せるかは商業登記規則61条3項が定めており7、具体的な人数の数え方と様式は株主リストの書き方にまとめています。
押印については、記載例1-11は、申請人である代表取締役は登記所に提出した印鑑を押すとしています2。代理人が申請する場合にのみ代理人の住所を記載して代理人の印鑑(認印)を押し、この場合は代表取締役の押印は必要ないとされています2。
費用
商号変更の登録免許税は、登録免許税法別表第一24号(一)ツ「登記事項の変更、消滅又は廃止の登記(これらの登記のうちイからソまでに掲げるものを除く。)」により、申請件数1件につき3万円とされています8。記載例1-11の登録免許税欄も「金3万円」で、収入印紙又は領収証書で納付し、収入印紙貼付台紙へ貼付するとされています2。
役員変更登記の区分(同号カ)には「資本金の額が1億円以下の会社については1万円」という定めがありますが8、商号変更が当たるツにはこの区分がありません。
登記申請書が収入印紙貼付台紙を含めて複数ページになる場合は、各ページのつづり目に契印する必要があり、契印には登記申請書に押した印鑑(代表取締役が法務局に提出した印鑑または代理人の印鑑)と同一の印鑑を使うとされています2。
期限は2週間
株式会社の設立の登記では、目的・商号・本店及び支店の所在場所などを登記しなければならないとされています(会社法911条3項1号・2号)3。そして会社法915条1項は、911条3項各号に掲げる事項に変更が生じたときは2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければならないと定めています1。商号はこの各号に入っているため、商号変更もこの2週間の対象です。
日数の数え方そのもの(初日を入れるか、末日が休日に当たるとき)は変更登記の期限は2週間、間に合わなかった場合の過料は変更登記を忘れると過料はいくら?が担当しています。
よくある質問
Q. 商号変更と同時に本店移転や目的変更もできますか。 A. 法務局の「商業・法人登記の申請書様式」は、商号の変更・目的の変更・本店移転を同じ区分にまとめていますが、記載例は1-11(商号の変更)・1-12(目的の変更)・1-13(本店移転)と別々に用意されています6。申請書のまとめ方と、組み合わせごとの登録免許税の扱いは目的変更登記は他の登記と同時にできる?が担当しています。
Q. 商号を変えたら、登記以外にも手続きが要りますか。 A. 本記事は登記の手続きを対象としています。登記以外の届出については、それぞれの提出先にご確認ください。
Q. 変更後の定款を登記申請に添付する必要はありますか。 A. 記載例1-11の添付書類欄に挙げられているのは株主総会議事録・株主リスト・委任状で、変更後の定款は挙げられていません2。議事録のほうは、定款第1条を新しい商号に変更する決議の例が示されています2。
Q. 商号に使える文字に決まりはありますか。 A. 本記事が参照した記載例1-11には、使用できる文字についての記載はありません。使える文字や表記の可否は、管轄の法務局にご確認ください。
書類作成サービスについて
wiz法人登記は現在、株式会社の本店移転・目的変更の書類作成(4,500円・税別)に対応しており、商号変更登記の書類作成には対応していません。商号変更登記については、この記事で紹介した法務局の申請書様式と記載例26をご利用いただき、ご自身で作成いただくことになります。本店移転や目的変更もあわせて必要な方は、その分の書類作成(株主総会議事録・株主リスト・登記申請書)にご利用いただけます。個別の法的判断や申請の代理は行わず、作成した書類はご自身で確認のうえ法務局に申請いただきます。登録免許税などの実費は別途必要です。
参照法令・出典(確認日: 2026-08-06)
免責
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。特例有限会社・合同会社の商号変更、および商号変更による組織変更は本記事の説明と手続きが異なります。株式会社であっても、自己株式・種類株式・定款上の追加の決議要件など、会社の実情によって議事録や株主リストの記載は異なります。法務局の記載例も、一例であり会社の実情に合わせて作成するようにと明記しています。個別のケースについては、司法書士または管轄の法務局にご相談ください。記載内容は確認日(2026-08-06)時点の法令・公表情報に基づきます。
Footnotes
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会社法915条1項(変更の登記・2週間以内)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_915 ↩ ↩2 ↩3
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法務局 記載例1-11「株式会社変更登記申請書(商号の変更)」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252658.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19 ↩20 ↩21 ↩22 ↩23 ↩24 ↩25 ↩26 ↩27 ↩28 ↩29 ↩30 ↩31 ↩32
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会社法6条1項(商号)・8条1項(不正目的の商号使用禁止)・27条2号(定款の記載事項)・466条(定款の変更)・911条3項1号2号(設立の登記事項)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
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会社法309条2項11号・3項・4項(株主総会の特別決議と、別の要件が定められた定款変更)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-At_309 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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商業登記法27条(同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125#Mp-At_27 ↩
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法務局「商業・法人登記の申請書様式」(第1 株式会社/3 商号・目的の変更、本店移転・様式1-11) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html ↩ ↩2 ↩3
-
商業登記規則61条3項(株主リスト)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023#Mp-At_61 ↩ ↩2
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登録免許税法 別表第一24号(一)ツ(登記事項の変更等・1件につき3万円)・同カ(役員変更等)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035 ↩ ↩2
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言ではありません。 個別のケースについては、管轄の法務局または司法書士にご確認ください。 記事内の法令・税額等は、記事末尾に記載の確認日時点の情報です。